一瞥ひとめ)” の例文
お駒ちゃんは一瞥ひとめでその二人の女をみて取った。それは磯屋のお針頭のおしんと、もう一人の若いほうは、小間使いのお美代であった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「…………」呆気あっけに取られた私が、急いで扉を排した時に、一瞥ひとめでなぜ太子がああも急いでいられたかが飲み込めた気持がした。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
親類の間にはこんな言葉がありました、——「サンテーズ家の人のように恋をする。」一瞥ひとめ見るだけで、分ってしまうのです。
寡婦 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
千々岩! 彼は浪子のかしらより爪先つまさきまで一瞥ひとめに測りて、ことさらに目礼しつつ——わらいぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
たけの高い痩せぎすなその姿が、何気なしにそこへ顔を出したお増の目に映ったとき、一瞥ひとめでこの間の手紙の主だということが知れたが、浅井の留守に、上げていいか悪いかが判断がつかなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
が、これが若松屋惣七なら、おせい様を一瞥ひとめ見ただけで、すべてがわかるはずだ。磯五としては、やりそうなことなのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
泥だらけになって喜んでいた子供たちは一瞥ひとめ見ると物も言わずにコソコソとい上ってしまった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
酒の気のある顔の疲れが、お増の一瞥ひとめにも解った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
さすがの姉上とても一瞥ひとめロゼリイスを御覧になったならば、この美しさには舌を捲いて感嘆なさるに違いあるまいと。しかも、それは姉上、ただに貴女お一人とは限りません。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
一瞥ひとめ見るといきなり私は「阿母さん!」と夢中で取りすがりました。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)