一物あるもの)” の例文
渠は再び草の上に一物あるものを見出だせり。近づきてとくと視れば、浅葱地あさぎじに白く七宝つなぎの洗いざらしたる浴衣ゆかた片袖かたそでにぞありける。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
魂が裳抜もぬければ一心にしゅうとする所なく、居廻りに在る程のものことごと薄烟うすけぶりに包れて虚有縹緲きょうひょうびょううちに漂い、有るかと思えばあり、無いかとおもえばないなかに、唯一物あるものばかりは見ないでも見えるが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)