一徹いってつ)” の例文
親房の一徹いってつにはからして少々まいる。第一政治の直裁は、人間でなければできぬ。——其許そこがしきりと憎む尊氏にも、よいところはあると思う。
あらん限りの苦労を重ねて……この世には悪人ばかりしか居ないものか……と思うほど酷遇いじめられたために自然とこんな風に一徹いってつな……自分の事はどこまでも
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
われ一人を子に持って、三年越しの病の床から、勘当を言い渡さねばならなかった父弾正の胸の中はどんなであったろう——一徹いってつ頑固がんこな父とのみ見ていた自分の眼は若かった。
最後に娘が一徹いってつに、たとい世間からどう云われても、社会的地位を失っても、そんな俗習にしつけられて、偽わりの結婚をして、可愛い子を生涯しょうがい日蔭ものにするのはけっしていやだと
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いまさら敵に降参とあっては、死せる万骨にたいしても、われら、生きてはいられません。かつまた一徹いってつな部下ども、荒くれども、これらも、何をしでかすか、自暴の極には分りませぬぞ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なかなか自分できめた事は動かない。一徹いってつなんだ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)