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村の学校は、其頃まだ見窄みすぼらしい尋常科の単級で、外に補習科の生徒が六七人、先生も高島先生一人りだつたので、教場も唯一つ。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それっりですよ。賊はピストルをわしの方に向けたまま、後じさりに段々遠ざかって行って林の中に見えなくなって了ったのです。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
養家の義父は病床につき、許嫁いいなずけ愛娘まなむすめは、生涯の女の不幸を約されてしまった。——そのほかの罪は、数えればりもないくらいだ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六条さんの御門を出ると、忽ち小宮山麗子の姿は霧の中に吸い込まれたように見えなくなり、それり消息が絶えてしまったんです
消えた霊媒女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「でもいつつて日をつてゐる訳ぢやございませんから、婆やさんでも来ましてあちらへ帰りますときに廻ればようございます。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
そこで公判はそのまゝ延期となり、九月二十七日には聖書会社が私訴の取下げをした事実があったりで、その年は暮れて終った。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
先生のお話を聴いているものは高村光太郎氏と私との両人りで静かな空気をこわすといけない故、絶対に他の人を立ち入らせなかった。
そして田舎ゐなかかへつてから、慇懃いんぎん礼状れいじやう受取うけとつたのであつたが、無精ぶしやう竹村たけむら返事へんじしそびれて、それりになつてしまつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
十方不知火流じっぽうしらぬいりゅうの秘伝中の秘伝、奥の奥の奥の、そのまた奥の、ずっと奥の——どこまでいってもりがございません……奥の手。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わたくしなが幽界生活中ゆうかいせいかつちゅうにもお客様きゃくさま水杯みずさかずきかさねたのは、たしかこのときりのようで、おもすと自分じぶんながら可笑おかしくかんぜられます。
「なにをかす、うぬこそ裾っぱりで灰汁あくのえごい、ひっりなしで後せがみで、飽くことなしのすとき知らず、夜昼なしの十二ときあまだ」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いえね、あの病気は始終そう附きりでいなけりゃならないというのでもないから……それに、今日つくだの方から雇い婆さんを
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
九歳の時に直江津なおえつの港を出たり、二十有余年の間、各国の汽船で世界中を乗廻して来た為吉にとって、海は故郷であり、慈母の懐ろであった。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
いくら書いてもりはありません。止します。今夜はまた少し長く起きてゐて仕事をします。あなたも今夜は懸命にしてゐらつしやるのでせうね。
そして段々暗くなつて行く海上の、ボートの中では、おくみと自分との二人りの運命の事しか、心に浮ばなかつた。
海の中にて (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
日が沈みる頃、地平線の上へ行き着くだろう。沈む日と人魚の舟とが一緒になって、地平線の外へ消え失せる時、月がそろそろと昇り始めるのだ。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
有難ありがとう、まア、此通り暮して居るから、仕合せと言うものだろうよ、不足を言えばりの無いことだから——」
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし坪三十円になったり一向上らない。寧ろ下る傾向が見える。大場君は地価も場合によっては下るものだと初めて承知した時、少々胆力が揺ぎ始めた。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
斯んな風であつたから、泊り客などが多くて屡々彼女と二人りの部屋にやすむやうなこともあつたが彼は、全く、意を用ひては手を触れ合つたためしもないのである。
小川の流れ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
住心地のいいうちで、アシルと云う腹心の部下と二人り、この下男代りの部下がルパンに対して各方面から来る電話を細大もらさず主人に通じる役を引受けていた。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
番「お虎婆アは先刻さっき帰りましたが、なんでも是は姉さんにうらみが有って仕た事でしょう、姉さんは間が悪いとでも思ったか、裏口から駈け出したり行方が知れません」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一陣ひとしきり大きな雪片せっぺんが風にあおられてたんぼの方から走って来た、立っている自分の胸はたちまち白壁のように真白になった。たださいわいに大きな吹雪はこれりで後は少し晴間となった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
十年余り前に靜と鏡子が渋谷でしん世帯を持つた頃に逢つたり逢はない昔馴染なぢみ小原をはらも来て居た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「此処はお前さんと私と二人りだから、遠慮しないでもいゝわ。さあ、羽織をお脱ぎなさい。」
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
みちれほどでけれどりにてはれも心配しんぱいなり子供こどもたちもさびしかるべく、甚之助じんのすけそのうちにもしたひて、中姉樣ちうねえさまならではけぬに、朝夕あさゆふ駄々だヾいかにさりて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お宮を早く帰せばかねも嵩まないと分っていたが、それは出来なかった。又仮令これりお宮を見なくなるにしてもお宮のいる前で勘定の不足をするのは尚お堪えられなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
くれたりで、無沙汰しているのですが、今はうしていますでしょう。一度お宅へ伺って、今井の娘にも逢おう逢おうと思っていながら、つい御無沙汰していましたが…………
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
世界は樽の中の、われ等萎びた大根と、糟と、それだけつりのものではないのである。
工場の窓より (新字旧仮名) / 葉山嘉樹(著)
三島の社の放しうなぎを見るように、ぬらりくらりと取止めのないことばかり申し上げていたら、御疳癖がいよいよ募ろうほどに、こなたも職人冥利みょうり、いつのころまでと日をって
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ひとつひとつ克明にかなえていったらりがないが、まずり。こしらえだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
一時間近くも、又時によるとそれよりも長く蕙子が出たり帰らない時は祖母は、又お久美さんの所へ出掛けたのだと云う事は感付いて居たのだけれ共、あんまりやかましくは云わなかった。
お久美さんと其の周囲 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そうしてあくる朝、まだ太陽の出ないうちに種々いろいろ準備したくをすっかり整えまして、一ツの船には布で巻いた二人の潜り手、それからもう一ツの船には長い綱を積み、それから村中有りりの船を皆
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
やっと三角帽を戴き毛皮つきいんばねすに手を通そうとしているところで、第四人目に楽しく殺害されて往き、この第四人目は——どうもりがないが、つまり、その度に飼主が変るんだけれど
「ジエィン! ジエィン! ジエィン!」——それつりであつた。
それり?』とあいちやんはグツトいかりをんでひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「忠節にりはなけれど、まず、ほどほどにお勤めなされませ」
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
やれ、上見りやりやなし、下見りやりやなし
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
『悪魔の言うことなんぞ聴いちゃ駄目でさ。碌なことにはなりませんぜ。罠に陥るがおちでさ。今はお金が欲しいと仰しゃる。だがもう少しして御覧なせえ、今度は何か別の物が欲しくなりまさ。そうなったらりがねえ。仕合せになりたいんなら』
追放されて (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
村の學校は、其頃まだ見窄みすぼらしい尋常科の單級で、外に補習科の生徒が六七人、先生も高島先生一人りだつたので、教場も唯一つ。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
光秀といえば目のかたきに嘲蔑ちょうべつし憎悪されている実証が他家の侍たちの中にすら語り草になっている空気だの、思い出せばりもない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「イヤ、そうじゃなかった。被害者はやっぱり一人りだ。ここにあるのは、死体の一部分に過ぎない。悪党め、何て真似をしやがるんだ」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「何あに、結構ですよ。慾を言えばりがありません。ところでお勤め口は官途ですか? 民間ですか?」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
美奈子は、恋人同士に、二人りの久し振りの、やがて最後になるかも知れない会見を与へようと思つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
小千谷から戻るときに、もういちど寄るといったが、二人はそれり顔をみせなかった。——また独りで茶をたてることになり、暫くのあいださわは淋しさを感じた。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「はははは、こうやっていたのではりがないよ。いっしょに明かしあうことにしようではないか」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
僕達はこんな会話をして、別れたりであった。その年の夏には、細君の病状がにわかに進んだので、今井は一家を挙げて伊豆の伊東に転地し、秋風が吹く頃まで、そこで暮していた。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
「何だと、死相があるから死ぬと言った?——それじゃ、七日と日をったのはどういうわけだ。その七日目にお釜は死んだんだぞ。手を下さなくたって手前てめえは下手人みたいなものだ」
母の側に附きりで居りまして、母の機嫌を取るばかりでなく、足腰を撫擦なでさすり、又は枕元に本を持って参りまして、読んで聞かせたりして、外出そとでを致しませんから、また母も心配して
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さう云つたり、彼は何時でも落ちつき払つてゐた。
惑ひ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
みんないつまでも金を置くからりがない。