茶筌ちゃせん)” の例文
茶筌ちゃせんでお茶をき廻しているような音でもあるが、どうも、それにしてはひどく乱暴な騒々しい音である。私は聞き耳を立て
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ギラリと輝く明眸、茶筌ちゃせんい上げた逞しい赭顔しゃがんが現われる。左ので、黒漆こくしつの髯を軽く抑えて、ズイと一足前へ出た——
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
織田信長が聟入むこいりをするとき頭の髪を茶筌ちゃせんったと云うがその節用いたのは、たしかそんな紐だよ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茶筌ちゃせん頭の五十おやじ、真鍮縁の丸眼鏡まるめがね額部ひたいへ掛けているのを忘れてあわててそこらをなでまわす。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
普通の茶の湯に用いるのではなくササラのような茶筌ちゃせんで茶の花をたて、御飯やら煮豆やら漬物等を少し入れて飲むのである。いわば茶道が民衆化されて起こった習慣と見ていい。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そんな日の午前あさ、紫の竜紋りゅうもんあわせ被衣ひふを脱いで、茶筌ちゃせんのさきを二ツに割っただけの、鬘下地かつらしたじった、面長おもながな、下ぶくれの、品の好い彼女は、好い恰好かっこうをした、高い鼻をうつむけて
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
長柄の太刀脇差を三五縄しめなわでぐるぐる巻にし、茶筌ちゃせんにゆった髪は、乱れたままである上にはかまもはかないと云う有様である。そして抹香を一攫ひとつかみに攫んで投げ入れると一拝して帰って仕舞った。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
生前せいぜんうす頭髪かみ茶筌ちゃせんっていましたが、幽界こちらわたくしもとおとずれたときは、意外いがいにもすっかり頭顱あたままるめてりました。わたくしちがって祖父じじ熱心ねっしん仏教ぶっきょう信仰者しんこうしゃだっためでございましょう……。
つんつるてんの飛白かすりつつっぽに、白木綿の兵古へこ帯を太く巻いた大男が、茶筌ちゃせんあたまを振り立てて、そこらで根から抜いて土のついてる六尺ほどの若木を獲物えものに渡り合うのにも
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
髪は油の光もない茶筌ちゃせんに結び、色浅黒く爛々らんらんたる眼は七万石の主公随臣を睥睨へいげいして垢じみた黒紋服に太骨の鉄扇を右手めてに握り、左の手は胸までそよぐ顎髯あごひげしごいて悠々然と座に着いた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
としころは三十ばかりには丸味まるみがかったそで浅黄あさぎ衣服いふくけ、そしてひざあたりでくくった、矢張やは浅黄色あさぎいろはかま穿き、あし草履ぞうり足袋たびった、はなは身軽みがる扮装いでたちでした。頭髪かみ茶筌ちゃせんっていました。