胡頽子ぐみ)” の例文
胡頽子ぐみの灌木が行手を遮り、それを彼が迂廻まわった時、巣籠っていた山鳩が、光に驚いて眼を覚ました。そうして長い間啼き止まなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
胡頽子ぐみの樹の下で、お雪は腰をかがめて、冷い水を手にすくった。隣の竹藪たけやぶの方から草を押して落ちて来る水は、見ているうちに石の間を流れて行く。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その他冬青木もち、椿、楢、はぜおうちむく、とべら、胡頽子ぐみ、臭木等多く、たらなどの思ひがけないものも立ち混つてゐる。
沼津千本松原 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
藪蚊やぶか彼等かれらけたあかあしはりして、しりがたはら胡頽子ぐみやううてふくれても、彼等かれらはちくりと刺戟しげきあたへられたときあわてゝはたとたゝくのみでげようともらぬかほである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わが心いまだ落ちゐぬにくれなゐの胡頽子ぐみあきなふ夏さりにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
頼母のいる位置から、十数間離れた、胡頽子ぐみと野茨とのくさむらの横に、戸板が置いてあり、そこから、お浦が、獣のように這いながら、頼母の方へ、近づきつつあった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)