箇所かしょ)” の例文
そればかりか、空気服をつけている者は、破損の箇所かしょを応急修理するために活動ができる。だから空気服を全員につけさせるのだ。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
顔に何か不具な箇所かしょがあるとかで、いつも黒い覆面ふくめんをかぶっていて、誰にも素顔を見せたことがないという、極端に内気なお嬢さんです。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
渡瀬は説明を続けているうちに、だんだん一つの不安心な箇所かしょに近づいていった。その個所を突破しさえすれば問題の解決はいちじるしくはかどるのだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
凜々りりしい、澄んだ、ピンと張ったプラチナ線のような声です。明日は、マレー沖海戦だな、あれを歌いますね。でもね、明日は一箇所かしょまちがえます。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
こぶしでたたかれた刀身は、その箇所かしょによって、ふとく細く震動して、単調なようで複雑な、複雑なようで単調の音波を、くうへむかって発するのだった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
工夫こうふは、野原のはらなかっている、電信柱でんしんばしらうえ仕事しごとをしていました。故障こしょうのある箇所かしょ修繕しゅうぜんしたのです。
頭をはなれた帽子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのほかちいさないくさかずのしれないほどやって、としたしろかずだけでもなん箇所かしょというくらいでした。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
八年まえ大学を卒業してから田舎いなかの中学を二三箇所かしょ流して歩いた末、去年の春飄然ひょうぜんと東京へ戻って来た。流すとは門附かどづけに用いる言葉で飄然とは徂徠そらいかかわらぬ意味とも取れる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何せよ、この図面だけでは、難解な箇所かしょも多く、実際の手がかりとするには、御困難でございましょうから、こよいのうちに、手前が要所へ解字を書きいれておきまする」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、材料ざいりょう取捨しゅしゃ選択せんたくせめ当然とうぜんわたくし引受ひきうけなければなりませんが、しかし通信つうしん内容ないよう全然ぜんぜん原文げんぶんのままで、私意しいくわへて歪曲わいきょくせしめたような個所かしょはただの一箇所かしょもありません。
その船はもう古いので、舳先の水切には無数の傷があったけれども、これが源太の船と衝突した跡だ、などと立証できる箇所かしょはなかった。船長もいちおう訊問じんもんされたが、あたまから否定した。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
というのは、それに手をつけようとして、すでに書き終った分を読みかえしてみた結果、意に満たない箇所かしょが非常に多く、そのままで稿をつづけることに全く厭気いやけがさして来たからであった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と見る間に「三!」とさけんで小初は肉体を軽く浮び上らせ不思議な支えの力で空中の一箇所かしょでたゆたい、そこで、見る見る姿勢を逆に落しつつ両脚りょうあしかじのように後へ折り曲げ両手を突き出して
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「くず」と云う地名は、吉野川の沿岸附近ふきんに二箇所かしょある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そういって三吉は地盛をした一箇所かしょに鋭い指を向けた。ああ、一体そこにはどんなに驚くべき事件の正体が暴露していたろうか。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どこか隙見すきみでもする箇所かしょはないかとさがしたり、そこを立ち去りかねていたが、いつまでそんなことをしていても仕方がないとあきらめて、通りすがりの自動車を呼びとめた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、手をあげて、すこし離れた箇所かしょを指さした。そこには、風雨にさらされて字の読めなくなった禁札が建っていた。御門内にてとんぼることならんぞよ、と大きく書かれてあった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
第一から第三まで、三人の若い婦人の射殺は巧妙にげられました。三人の射たれた箇所かしょは、完全に一致しています。貴方は弾丸たまの飛来した方向を計算で出されたようですね。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
故障の箇所かしょはどこだろうかと、千ちゃんは座席から立ちあがってはしごで下へおり、テレビジョン装置をしらべてみた。しかしアイコノスコープも発振器はっしんきもどこもわるくなさそうである。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし奴さん、うまい工合に傷の箇所かしょに、血どめのガーゼ——ガーゼじゃないが、きれを突込つっこんで、器用にその上を巻いてある。奴さんにとっては、これはうちの頭目以上の幸運だったんだ
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)