はら)” の例文
日本では神代の太古から、早く既にあったらしい。中臣なかとみはらいに現われている。「国津罪とは生の膚断ち、死の膚断ち、白人しろうと古久美」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たとえば彼らがはらいの儀礼の内に頼るべき力を感じている間は、その力によって示唆される永遠者は非人間的なある者である。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼が赴任して行って見たころの神社の内部は、そこのすだれのかげにも、ここのはらにも、仏教経巻などの置かれた跡でないものはなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、妙子はテーブルの下から脚を出して、寝間着の上からてのひら大腿部だいたいぶを切る真似まねをして見せ、又あわててそこをはらう真似をした。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もう、ああ云うふうに病気が進行しちゃったらおしまいだそうだ。いくらおはらいをしてみたところで、決してものは退散しないんだそうだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
この伯父は金光教信者で、家には神棚があって家族を率いて毎日礼拝しておはらいをあげていた。従兄も、姉も形式的にそれをやらせられていた。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
陸中の遠野とおのではこの日を麻の祝と名づけ、早朝に背の低い女の来ることをいやがり、来ると松の葉でいぶしてはらいをした。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今後その汚れた心を入れかえて、身に付きまとった禍いをはらわなければならないと、涙ながらに説きさとした。久次郎は黙っておとなしく聴いていた。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もっともこのおはらいの文句の意味が、そんなに早くからわかってたら、あっしの生命いのちは無かったかも知れません。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの神主さんこそは、その二人の陰気とけがれとを、極力払いのけようと、忠告もしたり、手きびしいおはらいもしたりしたのを、お雪はよく知っている。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
耶蘇教やそきょうで葬式をすると、かえって軽便で神聖でええがな。勝はお経も嫌いだし黒住くろずみのおはらいも嫌いじゃ」
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
そこにはシナの関羽かんうも祀ってある。チベットでは関羽の事をゲーサルギ・ギャルポ(花蕊はなしべの王という意味)というて、悪魔をはらう神として大いに尊崇そんすうして居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
はいなしこめ醜めききたなき國に到りてありけり。かれ吾は御身おほみまはらへせむ」とのりたまひて、竺紫つくし日向ひむかの橘の小門をど阿波岐あはぎに到りまして、みそはらへたまひき。
田蓑島たみのじまでのはらいの木綿ゆうにつけてこの返事は源氏の所へ来たのである。ちょうど日暮れになっていた。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
おお、昨夜の火柱のう。わたしゃあんな気味の悪い火の柱は生れて始めて見たわい。寿命が縮まったが、それに昨夜の今夜じゃ。村長さんに頼んで、村中の総おはらいを
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たちまち心づきて太刀を納め、おおいなる幣を押取おっとって、飛蒐とびかかる)御神おんかみはらいたまえ、浄めさせたまえ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これをキッドシュ(Kiddush)といい、節会をはらきよめる意味です。これが第一の酒杯。
物置の屋根裏で鳩がぽうぽうといている。目の前の枯枝から女郎蜘蛛じょろうぐもが下る。手を上げてはらい落そうとすると、蜘蛛はすらすらと枝へ帰る。この時たもとの貝殻ががさと鳴る。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
死体を家の中へ運び入れて、二つの手草たくさを作り、それで死体をはらって、彼らを蘇生させた。
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
一度この声がとどろくと、彼等は一切いっさいの仕事をめて謹慎きんしんし、しき気をはらわねばならぬ。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「ま、八五郎親分、錢形の親分もご一緒で、——あの船は、あのまゝにしてあります。一應洗ひましたが、念入りにおはらひをして、せめて廿八日の晩には使ひたいと思ひましてね」
土地の者はおそおののいて、玄妙観へ行って魏法師にこの怪事をはらうてくれと頼んだ。
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
馳走ちそうしお初穂はつほを上げておはらいをしたものである
耀かず、はらひ了へず
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この幣束へいそくで、おはらいをしてもらったのだか、祓い出されたのだか、二人はほどなく小屋の外へ出てしまいました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
久次郎どのには怪しい獣の悪霊あくりょうが付きまとっているので、それをはらうために毎夜秘密の祈祷を行なっていることは、おふくろ殿もかねて御存じの筈である。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
耶蘇教ヤソけうで葬式をすると、かへつて輕便で神聖でえゝがな。勝はお經も嫌ひだし黒住くろずみのおはらひも嫌ぢや。」
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
五節の舞い姫は皆とどまって宮中の奉仕をするようとの仰せであったが、いったんは皆退出させて、近江守おうみのかみのは唐崎からさき、摂津守の子は浪速なにわはらいをさせたいと願って自宅へ帰った。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
食物については宗教的なはらきよめをせねばならぬとか、神に対する誓いは父母に対する道徳よりも重んじなければならぬとかいうパリサイ人の方が神第一の敬虔な信仰家であり
それからその死骸を丸裸体はだかにして肢体を整え、香華こうげさん神符しんぷを焼き、屍鬼しきはらい去った呉青秀は、やがて紙をべ、丹青たんせいを按配しつつ、畢生ひっせいの心血を注いで極彩色の写生を始めた
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お許しを受けおはらいをしてお所変えをしたばかり、誰が非難などいたしましょう。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かくてたとえば「はらい」というごとき儀礼が彼らを守る魔力を持つと信ぜられた。しかしこれは彼らの知力の開展とともにその魔力を減じて行く。シナ文化との接触は徐々にこの傾向を高めた。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
耀かず、はらひ了へず
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
何分にもそのおはらいをお願い申したいと云って、半七は白木の台付きの箱をうやうやしく捧げて出した。箱の形から見て、それは一匹の白絹であるらしかった。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この二つの山までつづくということは滅多めったになく、もしそれがあった日には、土地の人は総出で竜神の社へ集まり、おはらいをし、物忌ものいみをし、重い謹慎をしておそれる。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
特別な神の祭り、はらい、修法しゅほうなどである。何にもすぐれた源氏のような人はあるいは短命で終わるのではないかといって、一天下の人がこの病気に関心を持つようにさえなった。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
香華こうげを供え、屍鬼をはらいつつ、悠々と火を焚いて腐爛するのを待つ事になった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「潔からぬ手」というのは、はらい潔めの水をかけないままの素手すでということです。塵のついた手を洗わない、という衛生上の事柄ではありません。潔めの儀式をしない、という宗教上の問題です。
みんなはらい清めらるるにきまったものじゃ、『罪という罪、咎という咎はあらじ』と中臣なかとみのお祓いにもござる、物という物、事という事が有難いお光ばかりの世界なのでござるよ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
源氏は浪速なにわに船を着けて、そこではらいをした。住吉すみよしの神へも無事に帰洛きらくの日の来た報告をして、幾つかのがんを実行しようと思う意志のあることも使いに言わせた。自身は参詣さんけいしなかった。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのうち、わしはやけへ参って噴火の本元を見届けて来ようと思いますが、今日は皆さんの御見舞を兼ねて、ひとつ皆さんの安心のために、山神のはらいをして上げたいと思って来ました
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんな時に自分などが貧弱な御幣みてぐらを差し上げても神様も目にとどめにならぬだろうし、帰ってしまうこともできない、今日は浪速なにわのほうへ船をまわして、そこではらいでもするほうがよいと思って
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鐙小屋あぶみごやの神主というのにとっつかまって、あぶなくはらい給えを食いそうなのをひっぱずして白骨へ来て見ると、忘れ物もとんと要領を得ない上に、君ももう出立してしまった後なんだ。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
施餓鬼せがきとおはらいの翌日のことでありました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鐙小屋あぶみごやの神主でもはらいきれまいよ
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ドリャおはらいをして進ぜよう
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)