まつ)” の例文
建築術のなかった昔にも神道はあった、樹を植えて神をまつったのがすなわち神社である——この故に三輪の神杉には神霊が宿る云々うんぬん
庭の奥の林の中には、近所の百姓地で荒れ放題になっていたという、稲荷様のほこらを移して、元のままながら小綺麗にまつってあります。
たとへば越中えつちゆう氷見ひみ大洞穴だいどうけつなかには、いまちひさいやしろまつられてありますが、そのあななかから石器時代せつきじだい遺物いぶつがたくさんにました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
本邦でも秀吉の馬塚(『摂陽群談』九)、吉宗の馬像(『甲子夜話』五一)、その他例多く、馬頭観音としてまつったのも少なからぬ。
私のうちに去来するもろもろの心は自己の堂奥どうおうまつられたるものの直接的な認識を私にび起させるために生成し、発展し、消滅する。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
またそういう婦人になにかふしぎな事があって、神にあがめまたはつかまつったという伝説は、今でもおりおり田舎いなかにはのこっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あっと、関興はそこに立つや否、おどろいて拝伏した。正面の小さい壇に明々と燈火ともしびを照らし、亡父関羽の画像がまつられてあるではないか。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かみまつられたといえば、ちょっと大変たいへんなことのようにおもわれましょうが、内容なかみけっしてそれほどのことではないのでございまして……。
ところでそこに語られているのは、熊野に今まつられている神々が、もとインドにおいてどういう経歴を経て来たかということなのである。
川へ続く崖のところに老樹が数本昼間も暗いくらいに繁っていて、その下に三宝荒神様さんぼうこうじんさままつってある。それで荒神風呂と名がついている。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
本妙寺にまつられてある、加藤清正公の神苑で、凱旋祝賀会があったときにも、私は白色銅葉章ようしょうと従軍徽章きしょうを胸にけた父と一緒に行った。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
芝増上寺の末寺飯倉赤羽橋の心光院に今なおまつられていることを最近に知り、それがまた故渡辺海旭先生と深い因縁のあることも分って
それを動物園で買い取ったのだが、そのとき先方は、まつってくれるなら譲るといって、ずいぶんと動物園に手を焼かせたという。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
本所にはいわやの弁天、藁づと弁天、なた作り弁天など、弁天のやしろはなかなか多いのであるが、かれがまつっているのは光明弁天というのであった。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
薄緑の芝生や、しなやかに昇る噴水で飾られたそのがある。処々しよ/\に高尚な大理石の像が立てゝある。木立の間には、愛の神をまつつたほこらがある。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
その日も孝也がでかけたので、日がれてから二人は会った。屋敷の北の隅に「茂庭明神」といって氏の神をまつったほこらがある。
月の松山 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「こんどのやく病はこのわしがはやらせたのである。これをすっかりほろぼしたいと思うならば、大多根子おおたねこというものにわしのやしろまつらせよ」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
空地の中央には何んとかいう小さな淫祠ほこらまつってあるが、その後の闇の中へお由の屍体を下して、二人は初めてほっとした。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大和西大さいだい寺の南に菅原神社といつて、天穂日命あめのほひのみこと野見宿禰のみのすくねと菅原道真とを一緒にまつつたやしろがある。そこにまゐつた事のある人は、社の直ぐ前に
他のチベット風の寺のように二階造りあるいは三階造りになって居りません。ただ一層の家でありましたが、その中に最も尊くまつってあるのが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼はそこにまつつてある「伎芸天」と共に暮して少しも淋しくなく、孤独の楽しみに充実して酔つてゐる事が出来た。しかしそこは画の家である。
とくに宝蔵殿のような場所では尚更なおさらである。それにしても、いまのこのまつり方は、あまりに人工的に過ぎはしないだろうか。尊ぶ気持はわかる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
すると彼らは討ち死にする。不幸のようではあるけれど、その華々しい戦没の様が、詩となり歌となってうたわれる。ある者は神にさえまつられる。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小さな木祠がまつってあって、扉を開けて見ると、穂高神社奉遷座云々と、禿び筆で書いた木札などが、散乱している。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
わからぬにしても写真を仏壇にまつられるようになったのでは、結局この私よりもあの男たちは不幸な人間であった。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
僕のうちには祖父の代からお狸様たぬきさまというものをまつっていた。それは赤い布団にのった一対の狸の土偶でくだった。僕はこのお狸様にも何か恐怖を感じていた。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日向丸はともの船底に船霊ふなだままつり、その小さい神棚の右よりに赤いおき上りの小法師がぽつりと一つ置かれてあった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
この立派な日本独自の字体に向う時、私たちは名も知られざる貧乏な職人たちの亡き霊をまつる志を失ってはならぬ。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あやしみて或博士あるはかせうらなはするに日外いつぞやつみなくして殺されたる嫁のたゝり成んと云ければ鎭臺には大に駭かれつかたてて是をまつり訴へたる娘を罪に行ひさきの鎭臺の官を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その洞窟の一つに、ギリシャの神パンをまつる宮がありました。それでこの町の旧名はパネアスと呼ばれたのです。
日本のずうつと西のはて或国あるくにでは、氏神といつて、どこのうちでも、先祖代々自分だけの神様をまつつてをります。
蛇いちご (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
多田院ただのゐん日光につくわう徳川家とくがはけ靈廟れいべうで、源氏げんじ祖先そせんまつつてあるから、わづか五百石ひやくこく御朱印地ごしゆいんちでも、大名だいみやうまさ威勢ゐせいがあるから天滿與力てんまよりきはゞかなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
鶴見はその石の頂上にある平面のところに、かつては小さながんまつられてあったものと想像した。この石はそこの村での或る信仰の対象物であったらしい。
これではならぬと思い、私は考えた末、これを私の前栽せんざいへ解放してやろうと思った。前栽には大きな石が積み重ねてあり、その上には稲荷いなり様がまつってあった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
お国のお山の上にやしろがあって、何をおまつりしてありましたか、家中の信仰も厚く、皆お参りをするのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その家は今でも連綿として栄え、初期の議会に埼玉から多額納税者として貴族院議員に撰出された野口氏で、喜兵衛の位牌いはいは今でもこの野口家にまつられている。
部屋へやの壁の上に昔ながらの注連縄しめなわなぞは飾ってあるが、御嶽山おんたけさん座王大権現ざおうだいごんげんとした床の間の軸は取り除かれて、御嶽三社をまつったものがそれに掛けかわっている。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
古火鉢と、大きな細工盤とでしきって、うしろに神棚をまつった仕事場に、しかけた仕事の鉄鎚かなづちを持ったまま、たがねおさえて、平伏をなさると、——畳が汚いでしょう。
「あすこは聖天しょうでんさまがまつってあるんですの。あらたかな神さまですわ。舟で行くといいんですけれど。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
○およそ 菅神をまつやしろにはおほかたは雷除らいよけ護府まもりといふ物あり。此 御神雷の浮名うきなをうけ玉ひたるゆゑ、 神灵しんれいらいいみ玉ふゆゑに此まもりかならずしるしあるべし。
いま通り過ぎて来た音羽おとわの護国寺からひつじさるの方角に当たる清土きよづちという場処で、そこへ行くと、今でも草むらの中に小さなほこらがあって、はじめはここにまつってあった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
木造の小さなほこらがあるが、確か不動尊をまつってあるという話しであった、絶頂は別段平地がある訳でもなく、またこの辺には樹は生えていなくて皆草ばかりである
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
女子大学に入ろうとする昔の幼ない少女よりも、今は心にまつる主キリスト、でなければ、陋巷ろうこうに沈淪してもがいている泥の中のマリヤの事を思っていたのであろう。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
藩主の祖先をまつつた神社の祭に全校生が参拝した際、社殿の前で礼拝の最中石に躓いてよろめいた生徒を皆に混つてくツ/\笑つた私を、後で伊藤がひどくなじつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
といって、本堂ほんどうまつってある勝軍地蔵しょうぐんじぞう勝敵毘沙門天しょうてきびしゃもんてんのおぞうまえに行ってみますと、どうでしょう。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
たじたじとなって彼はあおざめたのである。人々の前にあるのは屍棺しかんであった。北向きの壁に寄せてまつられ、包まれた白い布に、取りあえず松の葉が投げかけられていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
泣き声の大きさは界隈かいわいの評判で、やんちゃ坊主であった。路地の井戸端にまつられた石地蔵に、あるとき何に腹立ってか、小便をひっかけた。お君は気の向いた時に叱った。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
その本城たりし山吹城やまぶきじやう遺址ゐしは今猶其の東端にありて、田圃でんぽ蕭條のうち仔細にその地形を指點すべく、かたはらまつれる八幡宮の小祠せうしは義仲が初めて元服を加へたるところと傳ふ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
柿本人麿かきのもとのひとまろは、平安朝へいあんちようすゑになると、神樣かみさまとしてまつられるほど尊敬そんけいをうけるようになりました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
相馬将門そうままさかど威を東国に振い、藤原秀郷ひでさと朝敵誅伐ちゅうばつの計策をめぐらし、この神の加護によって将門をほろぼしたので、この地にいたり、喬々きょうきょうたる杉の森に、神像をあがまつったのだとある。