)” の例文
まるで捨身すてみのかまえとしか見えない。もし位置をえて、信玄がそれに拠るとしたら、信玄は決して晏如あんじょとしていられない気がする。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この竹の筒のやうなものが都合つごう十八あつたのを取りへ取り更へてかけて見たが、過半は西洋の歌であるので我々にはよくわからぬ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
宿舎は隊の方から指定してくれた所に宿泊することになっていて、みだりに宿所をえることは出来ません。大抵は村落の農家でした。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
其日そのひ二人ふたりしてまち買物かひものやうとふので、御米およね不斷着ふだんぎへて、あつところをわざ/\あたらしい白足袋しろたびまで穿いたものとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私たちはいつもヴェランダの椅子にかけて、朝から晩まで、移り変る陽脚ひあしと、それに応じて色をえる海の相とを眺めて暮らした。
そして、狙いを定めているうちに、馬車はごとりと揺れ、ぎしぎしときしめきながら方向をえた。同時に密茂した樹木が車体を隠した。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
得て来たものでまた現実をえてゆくということは全く自分の努力なしにはあり得ないことですから、そう云う意味を生活というなら
女性の生活態度 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
今はすっかり気をえて、いずれこの少年が子供を持つと、大概こんな大見栄みえを切るのだろうと、そう思うと何の不平も起らなくなった。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
それで筆者は幾度か考え直すに努めて見たものの、これをえてしまっては、全然この物語を書く情熱を失ってしまうのである。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さて着眼点をえて私は思います。寺内内閣は、どうして民衆の生命に関する問題をこうまで危険にひんせしめたのでしょうか。
食糧騒動について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
家内は一人ずつ寝巻に着えさせた。下女はまた、人形でも抱くようにして、柔軟やわらかなお繁のほおへ自分の紅い頬を押宛てていた。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
着物をえて晩餐、食後新聞、雑誌、小説など。トランプもやった。若いうち就寝前の一時間を実験室か書卓で費やしたが、晩年はやめた。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ところが間もなく光政は参覲のため江戸へ出立することになり、その日が来ると、長門は急に月代さかやきり衣服をえ、門を開いて外へ出た。
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこで迎えた法師が経を読み終えて、いよいよ食膳につくという時になると、法師が『御免なさい』といって袈裟を脱いで輪袈裟にえる。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
今しがた繃帯ほうたいへてもらつたところださうで、なるほど左の指が三本ほど一緒に真新まあたらしい繃帯でゆはへてありました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
黒い毛織の服を黒の絹のにへた——銀鼠のをのけると、私の持つてゐるものでは最上のそして、たつた一つ餘分に私が持つてゐる晴着なのだ。
花嫁自身髪結の家から島田で帰って着物をえ、車は贅沢ぜいたく、甲州街道まで歩いてガタ馬車で嫁入るなぞはまだ好い方だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
結婚といふものは、不思議なもので、一度で霊魂たましひまで黒焦くろこげにしてこり/\するのもあれば、性懲しやうこりもなく幾度いくたびか相手をへて平気でゐるのもある。
『それは舞踏ぶたう第一だいいち姿勢しせいだわ』とつたものゝあいちやんは、まつた當惑たうわくしたので、しきりに話頭はなしへやうとしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
お祭だと云ふ特別な心持で居ながら、やはり二人ぎりで箸を取る食事は寂しかつた。一時半頃に服をへて家を出た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
私のつくりえ、男は汚れても女は汚れぬと、男はこう悟るが、中々女の諦めきれぬのをよく諦悟ていごさせた歌である。
傾城買虎之巻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
氏はちょっと話頭をえ、「高村さん、いよいよ話がまったら、一つ早速実行やっておもらいしたいものがある……」
「九日。(五月。)徳今夕より関へ数学入門。」三たび師をへたのであらうか。是月の末に東京にある藤陰が書を棠軒に寄せた。其文はかうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
左伝通読十一偏その中、塾も二度か三度かえた事があるが、最も多く漢書をならったのは、白石しらいしと云う先生である。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ただ彼は時に死よりも重きものあるを観、これを成さんがために死をも辞せざりしなり。しかれば彼は要撃ようげきの事をも、中頃に至って要諫ようかんとはいいえたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
聴く。小児衣上に遣尿す。秀吉笑って一女倭じょわを呼びて小児を託し、其場に衣をう。傍に人無きが如くである
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お前が分別さええれば妾がすぐにも親方様のところへ行き、どうにかこうにか謝罪あやまり云うて一生懸命精一杯、たれてもたたかれても動くまいほど覚悟をきめ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
衣をえ、帯を結ぶに当って、そこにかすかな風が起る。その風によってしずかな燭の火がゆらぐというのである。「あふち」という語はあおりと同意であろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
何うかそれを造りへて呉れろと頼んでも、村の故老は断乎だんことしてそれに応じようともせぬとの事である。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「危い事だった。彼の獅子は病気だから、昨夜彼の箱に入れえたのだ。病気でなけりゃ、お前さんは喰われてしまったろう。危い。ヨナのような小僧さんだ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これに絣が入って静かなよい調子を示します。しかし近頃は「手結」の法を棄てて、新しく「絵図いいじい」と呼ぶ法にえたため、柄の過ちが急に目立って来ました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
藻西太郎も初めの中はどうでしたか手をえ品を変えて口説かれるうちにはツイ其気になり、それに又商売は暇になる此儘居ては身代限り可愛い女房もくわし兼る事に成るし
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
汝彼と彼の恩惠めぐみとを望み待て、彼あるによりて多くの民改まり、貧富かたみに地をへむ 八八—九〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
汚点しみだらけ……そのうち、一間しかないこの座敷の隅ずみに、埃がうずたかく積もって、ぬぎ捨てたえ着がはげちょろけのもみ裏を見せてひっくり返っているかと思うと
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「姫よ。おまえがあんまりオシャベリをするから本当の話でも嘘と思われるのだ。これからお前はオトナシ姫と名をえろ。そうして決していらぬことをオシャベリするな」
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
毎日、学校から帰って来るとはすぐ、はかまを脱いで帯にえ、商品を抱えて出かけるのではあるが、さていよいよとなるとどうしても人の家に這入ることができなかった。
もう一つ、今度彼が決行を急いだ理由は、伯父がその財産管理人としての権利を伸長させてベシイの全財産を政府の年金に組みえはしないかということをおそれたためだった。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
天禀うまれつきの才能に加えて力学衆にえ、早くから頭角を出した。万延元年の生れというは大学に入る時の年齢が足りないために戸籍を作りえたので実は文久二年であるそうだ。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
不思議の風雨ふううに、ひまなく線路をそこなはれて、官線ならぬ鉄道は其の停車場ステエションへた位、ことに桂木のいっ家族に取つては、祖先、此の国を領した時分から、屡々しばしばやすからぬ奇怪の歴史を有する
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小屋に這入ると、何より先きに、着かえを取り出して、汗にぬれた下着をぬぎえた。霧は絶えまなく小屋を包んで、小さな二重窓からは、真白にただようものの外は、何も見えない。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
「いやその安価やすいのが私ゃ気にわんのだが、先ず御互の議論が通ってあの予算で行くのだから、そうやすっぽいてすりの倒れるような険呑けんのんなものは出来上らんと思うがね」と言って気を
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「さうだ。學校に頼んでへて貰はう。更へてくれなきやあ最後の手段だ。」と、級長の谷が激越な態度で云つた。みんなは一種の叛逆的な氣分の快さに醉はされたやうに暗默裡にうなづいた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
皿をえるときは、彼は椅子のほうへからだをそらし、しりをちょっと動かす。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
女はなほ殊更ことさらに見向かぬを、此方こなたもわざとことばを掛けずして子亭はなれに入り、豊を呼びて衣をへ、ぜんをも其処そこに取寄せしが、何とか為けん、必ず入来いりくべき満枝の食事ををはるまでも来ざるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
まず娘どもをゆあみさせ新鮮潔白な絹衣を着せ、高壇に上って早朝より日中まで立たしむると、熱国の強日にさらされ汗が絹衣にとおる。一々それを新衣にえしめ、汗にうるおうた絹衣を収めて王に呈す。
(はやく次の間で着物をえて、彼の来ないうちに寝支度をしてくれ)
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
ややあって衛律が服をえるために座を退いた。初めて隔てのない調子で立政が陵のあざなを呼んだ。少卿しょうけいよ、多年の苦しみはいかばかりだったか。霍子孟かくしもう上官少叔じょうかんしょうしゅくからよろしくとのことであったと。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
にやうやくにして歸りぬ。されど二人の賓客を伴へり、夫人は一聲アントニオと云ひしが、たちまち又調子をへてアントニオぎみと云ひつゝ、そのおごそかに落つきたる目を擧げて、夫と我とを見くらべたり。
へるとすれば私は当然その位の時間は見出せると思ひました。
方角をえ得られるような信仰ではなかったかと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)