ぶち)” の例文
聞えるか、聞えるか。となりの野郎には聞えまいが、このくらいな大声だ。われが耳はぶちぬいたろう。どてッ腹へ響いたろう。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
滅多に手荒なことをしたことのなかった父親をして、しまいにお島の頭髪たぶさつかんで、彼女をそこに捻伏ねじふせてぶちのめすような憤怒を激発せしめた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
角「馬鹿野郎、まだ金を借りたいと云うか、名主へ連れてくのは面倒だからぶちのめしたんだ、けったらかねえか」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それといふと奴の中間なかまがばらばらと飛出しやあがつて、どうだらう小さな者の万燈をぶちこわしちまつて、胴揚どうあげにしやがつて、見やがれ横町のざまをと一人がいふと
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
別に葱の細かく刻んだのや茗荷みょうがだの浅草海苔あさくさのりいてんだのと紅生姜べにしょうがの細かいのだの紫蘇しそだのを薬味にして、炊きたての熱い飯へ残らずぶちかけたのだ。よく攪き廻して食べると実に美味うまいよ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「それを根に持って、貴方はわしをこんなにぶちなすったのですかい」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どさどさぶちまけるように雪崩なだれて総立ちに電車を出る、乗合のりあいのあわただしさより、仲見世なかみせは、どっと音のするばかり、一面の薄墨へ、色を飛ばした男女なんにょの姿。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
去年も己れが處の末弟すゑの奴と正太郎組の短小野郎ちびやらう萬燈まんどうのたゝき合ひから始まつて、夫れといふと奴の中間がばらばらと飛出しやあがつて、どうだらう小さな者の萬燈をぶちこわしちまつて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「国手、臓腑からを吐くまで何事もぶちまけたで、小児を棄てた処を言うですれど、これだけは内分に願いたいでね、ごくねえ。……巡査にでも知れるとならんですだ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こゝは英雄えいゆう心事しんじはかるべからずであるが、ぶちまけられるはうでは、なん斟酌しんしやくもあるのでないから、さかしま湯瀧ゆだき三千丈さんぜんぢやうで、流場ながしば一面いちめん土砂降どしやぶりいたから、ばちや/\とはねぶ。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
能役者になる前に、なぜ、鉄鎚かなづちのみを持って斬込んで、あねいじめるその姑婆しゅうとばばぶちのめさないんだい。——必ず御無用だよ。そういうかたがたを御紹介とか、何とか、に相成るのは。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「場所が場所だし、念ばらしに一斉いっときぶちまけたんだよ。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と鉄だろう、ぶちまけた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)