“少(ち)” の例文
四角な台石の上に大理石の丸いのとは少(ち)としゃれ過ぎたがなかなか骨は折れて居る。彼らが死者に対して厚いのは実に感ずべき者だ。
墓 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
晶子君なども少(ち)ッと考えればすぐ解りそうな間違を平気で、遣(や)ッて居られるようだ、もしこの根本の誤解を反省せらるるの機会あらば
子規と和歌 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
己(お)いらは少(ち)つとも聞かなかつたと正太もちうちうたこかいの手を止めて、誰れか中間(なかま)が来たのでは無いかと嬉(うれ)しがるに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蚯蚓(みみず)に団子………。さ様(やう)、それから生(なま)の肉類。エー、それに同じ魚で自分より少(ち)さいのを食べるものが多いといふことを知つておいでのお児(こ)も有(あり)ませう。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
「そんなに気をもむ事なんか少(ち)っとも無いんですよ。お前はもういいんだから、あっちへ行っておいで。」
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
手段は少(ち)と極端過ぎたかも知れんが目的は中々立派なものだ。我々は左(と)に右(か)く御恩を荷つた身分だから今でも忝く思つてる。綱吉公は我々の為にはヱス基督(キリスト)だ子。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
事によつたら、秋濤自身も自分を経済学者だとは少(ち)つとも気が注(つ)かなかつたかも知れない。自分を知るといふ事は、他人を知るといふ事以上に難しい習はしだから。
「こつちのおとつゝあ、幾(いく)つだつけな、少(ち)つと白(しろ)く成(な)つたな」突然(とつぜん)一人(ひとり)が呶鳴(どな)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
己があらけない貌(かお)だちに故意(わざ)と人を軽ろしめ世に倦(う)みはてた色を装おうとしていたものとみえて、絶えずたださえ少(ち)いさな、薄白く、鼠ばみた眼を細めたり、眉をしわめたり、口角を引き下げたり
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
少(ち)さい時からなかなか苦労をし尽して来たんだからね。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「寝られるかい。少(ち)ッたあ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんぼ日曜日でも少(ち)と寝坊が過ぎるというと、「昨宵(ゆうべ)は猫のお産で到底寝られなかった、」といった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「優艶天地を撼(うご)かす」といふ語少(ち)と変な語なれども、その意を察するに優美なる事をいふならん。支那の語にて優美なる詩が天地を撼かすとはいふまじと思へど、それも言葉咎(とが)めに類すれば言はず。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
己(お)いらは少(ち)つとも聞(きか)なかつたと正太(しようた)もちう/\たこかいの手(て)を止(と)めて、誰(だ)れか中間(なかま)が來(き)たのでは無(な)いかと嬉(うれ)しがるに、門(かど)なる人(ひと)は此店(このみせ)の前(まへ)まで來(き)たりける足音(あしおと)の聞(きこ)えしばかり夫(そ)れよりはふつと絶(た)えて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「腹を立てるほどの事でもなかったので、少(ち)と早まり過ぎたのサ、」とばかり軽くいっていた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)