尋常なみ)” の例文
男「えお嬢さん、お見かけ申せば何うも尋常なみならぬ御様子でげすが、何処へいらしッたのでげす、今おけえりになるんでげすかえ」
夜眼にハッキリとは解らないが、家の造り方も尋常なみちがい、きわめて原始的のものらしく、ひときわ眼立つ一軒の大厦たいかは、部落の長の邸であろう。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
常には左のみに心も留まらざりし結城の風采やうすの今宵は何となく尋常なみならず思はれて、肩巾のありて脊のいかにも高き處より、落ついて物をいふ重やかなる口振り
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
米友の身体からだ小兵こひょうな上に背が低いことは申すまでもありませんが、肉附にくづきだとて尋常なみの人よりは少しせているくらいですから、夜なんぞは誰でもみんな子供だと思っています。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
和歌山近在、矢宮より出す守符は妙に蝮にく。蝮を見付けてこれをげ付くると、麻酔せしようで動く能わずというが、予尋常なみの紙を畳んで抛げ付けても、暫くは動かなんだ。
その間嫂は平生の冷淡さに引き換えて、尋常なみのものより機嫌きげんよく話したり笑ったりした。けれどもその裏に不機嫌をかくそうとする不自然の努力が強く潜在している事が自分によく解った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
常にはさのみに心も留まらざりし結城の風采やうす今宵こよひは何となく尋常なみならず思はれて、肩巾かたはばのありて背のいかにも高き処より、落ついて物をいふ重やかなる口振り
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小姓「此の儘押出せと、尋常なみの人間より大きいから一人の手際てぎわにはいかん、貴方あなたそら尻を押し給え」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
蛙がうめくを聞き、いて見ると尋常なみの青大将が、蛙一つくわえ喉へみ下すたびに呻くので、その傍に夥しく蛙がさして、驚いた気色もなく遊びおよぎ居るを、蛇が一つ呑みおわりてまた一つ
つねにはのみにこゝろまらざりし結城ゆうき風采やうす今宵こよひなんとなく尋常なみならずおもはれて、肩巾かたはゞのありてのいかにもたかところより、おちついてものをいふおもやかなる口振くちぶ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ても尋常なみの人に成れんぞ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かならずふか子細しさいありて尋常なみならぬおもひを振袖ふりそでつヽひとなるべし、さてもゆかしやそのぬばたま夜半よはゆめ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つらからば一筋につらかれ、とてもかくても憂身うきみのはてはとねぢけゆく心に、神も仏も敵とおもへば、恨みは誰れに訴へん、漸々やうやう尋常なみならぬ道に尋常なみならぬ思ひを馳せけり。
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さらばうはさもうそにはあらず、うそどころかきしよりは十倍じふばい二十倍もつとし、さても、其色そのいろ尋常なみえなば、つち根生ねおひのばらのはなさへ、絹帽しるくはつとはさまれたしとねがふならひを、美色びしよくにて何故なにゆゑならん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
漸々尋常なみならぬ道に尋常なみならぬ思ひを馳せけり。
琴の音 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)