“孰(ど)” の例文
氏はこの二つの外(ほか)に今一つ博士の肩書を嫌つたが、実をいふと、この三つのうちで、孰(ど)れが一番無益物(やくざもの)であるかが問題であるに過ぎない。
圍爐裏(ゐろり)の邊(ほとり)は醉(ゑひ)が加(くは)はつて寶引(はうびき)の群(むれ)に行(ゆ)かぬ婆(ばあ)さん等(ら)は酒(さけ)の好(す)きな孰(ど)れも威勢(ゐせい)のいゝものばかりであつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二人は話が何時か、理に落ちて来た為(ため)だろう。孰(ど)ちらからともなく、黙ってしまった。青年は、他の一つの腰掛を、二三尺動かして来て、女と並んで腰をかけた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あの私から借った英語の本見て幾通りもの方法やってみたところが孰(ど)れもあんじょう行かんらしいので、ぐずぐずしてたら人目につくようになって来るし、気が気でのうて
卍 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
黒いのは一箇の両掛(りょうがけ)で、浅黄(あさぎ)模様の被布(おおい)をした長櫃(ながもち)が後(あと)に一箇、孰(ど)れも人夫(にんぷ)が担(かつ)いで
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
後(あと)なる一人(ひとり)は、中脊(ちうぜい)の細(ほそ)い男(をとこ)で、眞中(まんなか)の、其(そ)の盲目婦(めくらをんな)の髮(かみ)の影(かげ)にも隱(かく)れさうに、帶(おび)に體(からだ)を附着(くツつ)けて行違(ゆきちが)つたのであるから、形(なり)、恰好(かつかう)、孰(ど)れも判然(はつきり)としない中(なか)に、此(こ)の三人目(にんめ)のが就中(なかんづく)朧(おぼろ)に見(み)えた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ロミオ 他(ほか)のと較(くら)ぶれば彌〻(いよ/\)彼女(あれ)をば絶美(ぜつび)ぢゃと言(い)はねばならぬことになる。美人(びじん)の額(ひたひ)に觸(ふ)るゝ彼(あ)の幸福(しあはせ)な假面(めん)どもは、孰(ど)れも黒々(くろ/″\)と製(つく)ってはあれど、それが却(かへ)って其(その)底(そこ)の白(しろ)い面(かほ)を思出(おもひだ)さする。
そして孰(ど)っちにも、あなたとあたくしの、頭文字が刻んである。
方子と末起 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
牛乳でも鶏(かしわ)でも何でもいゝから、孰(ど)れか一つぐらゐ食べてゐてくれないだらうか、明日の朝眼を開いた時あのお皿が空になつてゐてくれたら、さうしてフンシが濡れてゐてくれたら
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孰(ど)ちらからともなく、黙つてしまつた。青年は、他の一つの腰掛を、二三尺動かして来て、女と並んで腰をかけた。生(なま)あたゝかい晩春の微風が、襲つて来た為だらう。花が頻りに散り始めた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
棺(くわん)は僅(わづか)な人(ひと)で葬(はうむ)られた。それでも白提灯(しろぢやうちん)が二張(ふたはり)翳(かざ)された。裂(さ)き竹(だけ)を格子(かうし)の目(め)に編(あ)んでいゝ加減(かげん)の大(おほ)きさに成(な)るとぐるりと四方(はう)を一つに纏(まと)めて括(くゝ)つた花籠(はなかご)も二つ翳(かざ)された。孰(ど)れも青竹(あをだけ)の柄(え)が附(つ)けられた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あゝ、其(そ)の姨捨山(をばすてやま)と云(い)ふのは孰(ど)れでございます。」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
牛乳でも鶏(かしわ)でも何でもいゝから、孰(ど)れか一つぐらゐ食べてゐてくれないだらうか、明日の朝眼を開いた時あのお皿が空になつてゐてくれたら、さうしてフンシが濡れてゐてくれたら
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
牛乳でも鶏(かしわ)でも何でもいいから、孰(ど)れか一つぐらい食べていてくれないだろうか、明日の朝眼を開いた時あのお皿が空になっていてくれたら、そうしてフンシが濡れていてくれたら
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分の方から特に孰(ど)の指輪がほしいと云ってねだったこともあるらしいと云う。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そいから先の出来事は孰(ど)の新聞にもあない委(くわ)しいに出ましたぐらいで、先生かてよう御承知ですやろし、もうもうそないに管々(くだくだ)しいに過ぎ去った日のことお聞かせせんかて、……何や私も
卍 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども孰(ど)れが尾上殿やら、何しろ一と目見たゞけですし、いずれも/\美しい人ばかりですから、迷惑していますと、一人の方(かた)が聞し召した盃を持ちながら、私の傍へちか/″\と寄って来られて
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)