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嗄
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か
ふりがな文庫
“
嗄
(
か
)” の例文
それは、驢馬が帰って来ながら、ありったけの声を振絞って、なに平気だ、なに平気だと、声が
嗄
(
か
)
れるほど
啼
(
な
)
き続けているのである。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
千枝松は
喉
(
のど
)
の
嗄
(
か
)
れるほどに藻の名を呼びながら歩いたが、声は遠い森に
木谺
(
こだま
)
するばかりで、どこからも人の返事はきこえなかった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「松山の伯父さんの病気見舞いといって、出てきたんですけれど」ふみ江は
嗄
(
か
)
れたような声でぐずっている子供をすかしながら答えた。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
今
(
いま
)
は
早
(
は
)
や、お
慈悲
(
じひ
)
、お
慈悲
(
じひ
)
の
聲
(
こゑ
)
も
嗄
(
か
)
れて、
蒋生
(
しやうせい
)
手放
(
てばな
)
しに、わあと
泣出
(
なきだ
)
し、
涙
(
なみだ
)
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
く
下
(
くだ
)
ると
聞
(
き
)
けば、
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
にも
又
(
また
)
あはれに
成
(
な
)
る。
麦搗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それへ猛撃する甲軍は、いくら指揮の声を
嗄
(
か
)
らしてみても、いたずらに、惜しむべき将士を、効果なく
死楯
(
しにだて
)
としてしまうだけに過ぎない。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
東西両国は野次馬の山、役人が声を
嗄
(
か
)
らして追い散らしますが、
蠅
(
はえ
)
のように集まって来る群衆は、手の付けようもありません。
銭形平次捕物控:067 欄干の死骸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その古趣と不潔と野蛮と俗臭の小首府、神様と文明に忘れられたLISBOAが、こうおりぶ油くさい
嗄
(
か
)
れ声を発して僕の入市に挨拶した。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
もうよくなったから、今夜はゆくつもりだったと云ったが、そう云いながらも軽い
咳
(
せき
)
をするし、すっかり声を
嗄
(
か
)
らしていた。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もう此頃になると、山は
厭
(
いと
)
わしいほど緑に埋れ、谷は深々と、繁りに隠されてしまう。
郭公
(
かっこう
)
は早く鳴き
嗄
(
か
)
らし、
時鳥
(
ほととぎす
)
が替って、日も夜も鳴く。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「もう呼び出してあるのよ。あたし声が
嗄
(
か
)
れて、
咽喉
(
のど
)
が痛くって話ができないからあなた代理をしてちょうだい。聞く方はあたしが聞くから」
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
良人はそれを見るとやや
嗄
(
か
)
れたような中年男の声に、いたわりの甘味をふくめて、「ははあ」と軽く笑って云うのでした。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それが大変うまく、緩急をつけて、なかなかちょっと誰にでもはやれない地唄の中の
許
(
ゆる
)
し物を
嗄
(
か
)
れた渋い声で唄って来る。
京のその頃
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
少しは眠れ、食欲もあり、時々本を読み、読んだことの書き込みをし、友だちに会うことを好むが、衰弱のために声まで
嗄
(
か
)
れ、会話がしにくい。
森の生活――ウォールデン――:01 訳者の言葉
(新字新仮名)
/
神吉三郎
(著)
少しは眠れ、食欲もあり、時々本を読み、読んだことの書き込みをし、友だちに会うことを好むが、衰弱のために声まで
嗄
(
か
)
れ、会話がしにくい。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
船頭と
親仁
(
おやじ
)
は声を
嗄
(
か
)
らして乗客を一人一人、船の底へ移します。船の底の真暗な中へ移された二十三人の乗合は、そこで見えない
面
(
かお
)
をつき合せて
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夫婦と覺しき
男女
(
なんによ
)
、
表
(
おもて
)
をのみ飾りたる衣を
纏
(
まと
)
ひて板敷の上に立ちたるが、客を
喚
(
よ
)
ぶことの忙しさに、聲は全く
嗄
(
か
)
れたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
階下の茶の間ではその日午過ぎから高声で主婦さんが
嗄
(
か
)
れた声の男と話している何かの話のつづきをまだ喋っていた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
床の上へ坐っているのは、
業病
(
ごうびょう
)
も末になったのであろう。顔は崩れ、声は
嗄
(
か
)
れて、齢さえも定かでない老人であった。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
男女の相違こそあれ、同じ精神状態に陥って、おなじ苦しみを体験させられている私は、心の底までその
嗄
(
か
)
れ果てた泣声に惹き付けられてしまった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ギックリして、声を
嗄
(
か
)
れさせながら、鷲尾は自分のネクタイが歪み、ズリ落ちそうな帽子の下から、
蓬々
(
ぼうぼう
)
の頭髪がハミ出してるのに
慌
(
あわ
)
てて気がついた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
彼は
嗄
(
か
)
れてはいるが、よくひびく、量の多い声を持っていた。彼の
喋
(
しゃべ
)
ることは、窓硝子が振える位いよく通った。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
役人は、いくら声を
嗄
(
か
)
らして
訊問
(
じんもん
)
しても、相手がまるでこちらを
馬鹿
(
ばか
)
にしてるやうに、返事をしないので、威厳を損はれたと思ひ、腹を立ててゐたのである。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
最後に残った一人の山窩、横っ飛びに逃げながら、声を
嗄
(
か
)
らして叫んだのは、仲間を呼びに行くのだろう。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
どこかで
嗄
(
か
)
れたような
啼
(
な
)
き声がきこえたかと思うと、老いさらばえた一匹の犬が近づいて来るのでした。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
誰もそれを
咎
(
とが
)
めるものがない、小鳥のように私は自由だ。歌い、歌い、声の
嗄
(
か
)
れるまで歌い続ける。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
勝栗のように頭が
禿
(
は
)
げて、声が江戸前に渋く
嗄
(
か
)
れて、鼻唄ひとつが千両だった。江戸もん同士がひどく気さくで、御代は太平
五風十雨
(
ごふうじゅうう
)
で、なんともいえず、嬉しかった。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
後から後から
雪崩
(
なだれ
)
を打って、旅客が詰めかけてくる。次長が声を
嗄
(
か
)
らして、必死にデッキの外へ追いやっている。探偵の一人が張り番に立って、やっと騒ぎが静まってきた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と声を
嗄
(
か
)
らしての制止も、はやり立った後陣の耳に入るわけがない。われ先にと進む兵たちに押され押された先陣の兵は、悲鳴をあげながら川に落ちては次々と溺れていった。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
人の足音や話声や、
鐸
(
すず
)
の
音
(
おと
)
や、相図の笛が聞えるだけである。最初は女に新聞を読ませて聞いたが、声が
嗄
(
か
)
れて来たので
止
(
や
)
めさせた。二人とも都の住いへ帰るのが嬉しかった。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
問屋の帳場が揚荷の
帳付
(
ちょうつけ
)
。小買人が駆廻る、仲買が声を
嗄
(
か
)
らす。一方では
競売
(
せり
)
が始まっていると思うと、こちらでは荷主と問屋が手を
〆
(
し
)
める。雑然、紛然、見る眼を驚かす
殷賑
(
いんしん
)
。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
しかも、新しい名取りの声は、
旱
(
ひで
)
りの後の古沼のように惨めにも
嗄
(
か
)
れて
終
(
しま
)
った——。
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
男は、かすかに現われた安堵の表情を、強いて隠すように
嗄
(
か
)
すれた小声でいった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
開いたりしめたりする
扉
(
とびら
)
の音、
肱金
(
ひじがね
)
の上にきしる鉄門の響き、衛兵らの騒ぎ、門監らの
嗄
(
か
)
れた叫び声、中庭の
舗石
(
しきいし
)
の上に当たる銃の床尾の音、それらのものが彼の所まで聞こえてきた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
白皙
(
はくせき
)
の青年は
頬
(
ほお
)
を紅潮させ、声を
嗄
(
か
)
らして
叱咤
(
しった
)
した。その女性的な高貴な風姿のどこに、あのような激しさが潜んでいるのか。悟浄は驚きながら、その燃えるような美しい
瞳
(
ひとみ
)
に見入った。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼女の足はよろめき、胸は
烈
(
はげ
)
しい呼吸に波打ち、声はすでに
嗄
(
か
)
れがれであった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
著
(
き
)
ている着物からしてどうもはっきりせず、女の上っ張りによく似ているし、頭には田舎の
邸婢
(
やしきおんな
)
がよくかぶるような頭巾をかぶっている。が、声だけは、女にしては少し
嗄
(
か
)
れているようだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
そこは、二十七か国語が話されるという、人種の
坩堝
(
るつぼ
)
。極貧、小犯罪、失業者の巣。いかに、救世軍声を
嗄
(
か
)
らせどイースト・リヴァの澄まぬかぎり、ここの
どん詰り
(
デッド・エンド
)
は救われそうもないのだ。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
三百人も四百人も集つて、声を
嗄
(
か
)
らして歌ひながら、雨乞踊を踊つてゐますと、そこへ向ふの方から、青い物を
荷
(
にな
)
つた男が、一人やつて来ました。よく/\見ると、それは馬鹿七でありました。
馬鹿七
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
もっとグン/\突込んで、恰度警察で被告を調べるように、少しでも前後矛盾する所があれば、声を
嗄
(
か
)
らし腕を振り上げてゞも問い質して呉れなくてはならない。断じてそんな事はありません。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
と正次郎君は一
角
(
かど
)
の手柄を立てた積りだろうが、声を
嗄
(
か
)
らしていた。
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
遣手
(
やりて
)
といいますか、娼妓の監督をする
年寄
(
としより
)
の女が、意見をしたり責めたり、種々手を尽しても仕方のない時は、離れへ連れ込んで
縛
(
しば
)
って棒か何かで打つのだそうで、女の泣く声が
嗄
(
か
)
れがれになる頃
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
青年団員は、声を
嗄
(
か
)
らして、沈着な警報をつづけた。
空襲下の日本
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
左膳の
嗄
(
か
)
れ声が、またもや森の木の葉をゆすった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
声
嗄
(
か
)
れし説明者こそ
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
師走
(
しわす
)
の風の寒い一夜を死人のふところに抱かれていた赤児は、もう泣き
嗄
(
か
)
れて声も出なかったが、これはまだ幸いに生きていた。
半七捕物帳:17 三河万歳
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まる四日間というもの、声も
嗄
(
か
)
れ、四肢も離ればなれになるばかり、東西両門へ力攻したが、さしたる損害も与え得なかった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いくら
咽喉
(
のど
)
を
絞
(
しぼ
)
り声を
嗄
(
か
)
らして
怒鳴
(
どな
)
ってみたってあなたがたはもう私の講演の要求の度を経過したのだからいけません。
現代日本の開化
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かの女もむす子も貧しくて、食べるものにも事欠いたその時分、かの女は声を泣き
嗄
(
か
)
らしたむす子を慰め兼ねて、まるで
譫言
(
うわごと
)
のようにいって聞かした。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
厚い大きな唇がすばらしく早く動いて、調子の狂った楽器のような、ひどく
嗄
(
か
)
れた声が止めどもなく
迸
(
ほとば
)
しり出た。
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
裏手の貧乏長屋で、力のない赤子の
啼
(
な
)
き声が聞えて、乳が乏しくて、
脾弛
(
ひだる
)
いような
嗄
(
か
)
れた声である。
四下
(
あたり
)
はひっそとして、他に何の音も響きも聞えない。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
嗄
漢検1級
部首:⼝
13画
“嗄”を含む語句
皺嗄声
皺嗄
嗄声
咳嗄
嗄枯
嗄々
嗄聲
洒嗄
老嗄
薄嗄