)” の例文
「今日十二時半の汽車ぢや。今、電報が来ただ。えれエ急なこンだで、おめえけて貰はにや、へえ、庭の掃除が間に合はんで……」
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
けて働く面々も、すぐり抜きたる連中れんじゅうが腕によりたすきを懸けて、車輪になりて立廻るは、ここ二番目の世話舞台、三階総出そうで大出来なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
稲を刈ってけるのは、心あっての事ともそうでないとも見られるが、そのそぶりはなんでもないもののする事とは見られない。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
原色塗りの低い建物がお互いにけあって並んで、誰かの言った「天刑病市ポウト・サイド」の感じを適切に裏書きしている。
「いゝえ。あなたこそ毎日々々のおもりで、本当に大変ですわ。でもあなたがけに来て下さつたので、本当に大助かりよ。」
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
台所には、すべてに無器用な婆さんをけに、その娘のお銀という若い女も来て、買物をしたり、おつゆの加減を見たりした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
飲むといっても、おつぎにけてもらってせいぜい一本というところだし、それもたいてい三分の一は残るのが例であった。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おい、豆腐屋。いいところでつらを見た。おめえにすこしけて貰いてえことがあるんだが……。おめえは鎌倉河岸の行き倒れを知っているか」
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
土地から蝋燭代を貰って景気をけに出る棟梁株あたまかぶの縁日商人に五種あって、これを小物、三寸、転び、ぼく、引張ひっぱりとする。
同じ長家ながやる重二郎の母をけようと思ったが、否々いや/\先程又作が箱の中へ入れて隠した書付が、万一ひょっとしての三千円の預り証書ではないか
三四日った。いつも女のけるのは朝晩の忙がしい時だけで、昼は顔も出さない。考えて見ると、奉公人でないから其筈だが、私は失望した。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
留守宅にはお婆さんと、弘と、女中がわりにけに来た女と、捨吉と、それからポチという黒毛の大きな犬とが残った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「うん。けづなんごだもな。たぐれでばがり居で、一向仕事けるもさないで。今日も町で飲んでらべぁな。うな爺んごにるやなぃぢゃぃ。」
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「いや今日は飲まない。それともおたかさんが半分けてくれるというんなら、そしてついでにお金の方もね。」
球突場の一隅 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
一体その山崎と云う男が外人係と云う格で、外人に関する外交は、引き受けて居たのですが、一人で手が廻りかねるので、時々は私がけて居たのです。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「一寸、馴染がある——何うでえ、庄公、一つ、富士春仕込みの、怪しげ節でも、けにやらんけ。割をやらあ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「じゃあ、けてちょうだい。……うれしい、飲んでくれたわね。もひとつよ。嫌アん……それをけてからよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「エ、久保本、お前が下席を。ああいいともいいとも、そりゃめでたい、けて上げるとも! 安心おし」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
その本家から僕は今まで学資を半分ずつけてもらったが、本家の両親は行く行くその娘を僕にくれたいという下心らしい事は僕も先年帰省した時始めて推測した。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「あゝおちやん、あんたの貰たお盃やないしか。一人で飮めんのなら、定はん呼んで來てけてお貰ひやす。」とお時は笑つて、がれた盃をお駒の前へ戻さうとすると
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ことに彼はこの点においてお延から軽蔑けいべつされるのを深く恐れた。堀に依頼して毎月まいげつ父からけてもらうようにしたのも、実は必要以外にこんな魂胆が潜んでいたからでもあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
半助 今日は弥造どんが捕親とりおやだ。そいでお前さん方もけに出たと言うのででも……?
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「いゝえ、これがもし、若宮君直接じかの話で、『矢の倉』のまえにもちゃんと持出せる話なら喜んであたしァ加勢する。——一年でも二年でもちゃんと暇をもらってけに行く……」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「ひゃあ、このやつがれ!……」と、はいって来た看視人が喚きたてた、「何たる悪魔がけおったぞな? グリッコやい、イヴァンやい! いそぎうよう、抜け出おったがな。」
開業する時にも父からは色々けて貰つてゐるんだから。全然ただといふわけにはいかんでせうが……、しかしそれでも無理な時には遠慮なく云つて下さい。僕がいいやうにしますから。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「おらもけてやるぞ、なあ勇吉どん」
田舎風なヒューモレスク (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
けに來ね。 (歌謠番號一五)
「ぢや俺が半分けて遣るから」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この真珠パールの本店が築地の割烹かっぽう懐石で、そこに、月並に、懇意なものの会がある。客が立込んだ時ここから選抜えりぬきでけに来た、その一人である。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うまくないの。これを飲むと温暖あったかになるんだけれども……。」と、お葉は笑った、「じゃア、あたしけて上げますよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「うん。けづな※ごだもな。たぐれでばがり居で、一向仕事けるもさないで。今日も町で飲んでらべぁな。うな爺※ごにるやなぃじゃぃ。」
十月の末 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なにも、家の暮しをけさせるわけぢやなし、やりたいつてことを一度はやらせてみるつもりだよ。あたしは。
まだ太郎の家のほうは毎月三十円ずつけているし、太郎の家で使っている婆さんの給金も私のほうから払っているし、三郎が郊外に自炊生活を始めてからは
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
本郷の道場へ太刀だちに頼まれていって、意外にも柳生の若様と斬り結んだり、それが後では、その源三郎といっしょになって不知火流の門弟を斬りまくったり……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まだやにっこいこの自分に真打とりをとらせてくれる以上は、せめて師匠くらいのところをけさせなければ看板づら花やかに客が呼べないものとおもっているくらいのことは
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
半助 今日は弥造どんが捕親とりおやだ。そいでお前さん方もけに出たというのででも……?
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
それでもこの女の時々けに来るということは、そんなに厭わしいことでもなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
弾くそうだし、ほかになにかやれる者があったらけてもらいたいが、どうだろう
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「——小者っ、こっちだっ、こっちへけに来いっ」せながら、呼んでいる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お湯から買物に回ッて……そしてネ自家じぶんもモウ好加減に酔てる癖に、私が飲めないと云うとネ、けてるッてガブガブそれこそ牛飲ぎゅういんしたもんだから、究竟しまいにはグデングデンに酔てしまッて」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
うそだうそだ。そらおとよさんはおれがあんまり稲刈りが弱いから、ないしょでけてくれたには相違ないけど、そりゃおとよさんの親切だよ。何も惚れたのどうのってい事はありゃしない。ばかまんめ何を
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
昔は江戸から川崎の大師河原まで五里半とかいうので、日帰りにすれば十里以上、女は勿論、足の弱い人たちは途中を幾らか駕籠にけて貰わなければなりません。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あの磯屋の旦那の五兵衛さんて人に見込まれてねえ、ちょっとけに行ってあげているんだよ
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
見つつ松崎が思うまで、来れや、来れ……と言った差配おおやの言葉は、怪しいまで陰に響いて、幕の膨らんだにつけても、誰か、大人が居て、蔭で声をけたらしく聞えたのであった。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「虔十、あそごは杉植※でも成長おがらなぃところだ。それより少し田でも打ってけろ。」
虔十公園林 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
いくらかの時間をけに来て頂くことにしたんです……それに、君、吾々の塾も中学の設備をして、認可でも受けようというには、肩書のある人が居ないと一寸ちょっとこれで都合が悪いからネ
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「私先生のところへ来て、家事のおけしたいと思うんですけどどう?」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
昇が酒をいた、飲めぬと云ッたらけた、何でも無い事。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「虔十、あそごは杉植ぇでも成長おがらなぃところだ。それより少し田でも打ってけろ。」
虔十公園林 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
祖父江出羽守そふえでわのかみ狩猟地かりちだった田万里は、殺生を好む出羽守のたびたびの巻狩まきがりと、そのたびごとの徴発、一戸一人のけ人足、荷にあまる苛斂誅求かれんちゅうきゅうのために、ついに村全体たってゆけなくなり
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)