おつしや)” の例文
御主人様は大悦おほよろこびで、それではその御礼に、おぢいさん、おばあさんに天の羽衣を織つて、御礼にあげなさいと、おつしやいました。
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
彼女は無性むしやうになつかしくなつた。情味の籠つたおつかさまのおつしやり方が涙を誘つたのか。もつと大きな人生の暖みと云ふことが心をそゝつたのか。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
「だけれど、私といふことを忘れてゐやしないかと思つて。——私はこの間はだれだらうと思つた。すつかり見ちがへましたよ。」とおつしやりながら
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
私はうもだ私のときを整理する事を知らないのでせうか。ああ夫人よ、あなたのおつしやつた事は道理であると信じます。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かあさま、本統におつしやる通りですよ、此風琴を見ると心地がわるくなり升から、たゝんでしまひませうネかあさま
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
難有ありがたい、さうおつしやつて下さる人は、貴郎ばかり。決して……決して」と重右衛門は言葉を涙につかへさせながら
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
『まあ、左様さうおつしやらないで、わしに任せなされ——悪いやうにはねえからせえて。』と音作は真心籠めて言慰いひなぐさめた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それをいた刹那せつなのわたしは、その神樣かみさまのやうなことをおつしや先生せんせいを、こゝろなかで、をあはせてをがんでゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ウルピノさん聖人ひじりおつしやつたやうに、むかしから色々いろ/\口碑くちつたへのあるなかで、船旅ふなたびほど時日ときえらばねばならぬものはありません、凶日わるいひ旅立たびだつたひと屹度きつと災難わざはひ出逢であひますよ。
弟からも約束が違ふつて、厳重に云つて参りますの。それでもやつと父は納得させましたし、大森のお宅でも当分置いて下さるやうにおつしやつて下さいますし——今夜この手紙を
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「心配をおしでない。私たちはどうなつても、お前さへ仕合せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。大王が何とおつしやつても、言ひたくないことは黙つて御出おいで。」
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
老女おばさん、わたし左様さうですよ、始めて此方こちらへ上つて——疲れたらうから早くおやすみツておつしやつて下だすツて、老女さんの傍へ寝せて戴いた時——私、ほんとに母の懐へ抱かれでもした様な気がしましてネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
『アノ、久子さんとおつしやいます……。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『そんな事をおつしやるもので無い、貴方あなた勤人つとめにんにおさせ申す位なら私、こんな襤褸ぼろげて苦労は致しません。』
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
『今日は御年貢おねんぐを納めるやうにツて、奥様おくさんおつしやりやして——はい、弟の奴も御手伝ひに連れて参じやした。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのためにどうでせう、わたしどもねん年中ねんぢうふやはずなんです。神樣かみさま、なんとかおつしやつてくれませんか。どうしてあなたはあんなさけつくかたなんか人間にんげんにおをしえになつたんです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
祖父ぢいさまはそれを請取うけとり、銀貨をひつくらかへし、兎見角見とみかくみして、新らしい銀貨だとおつしやつて二ツともそのまゝ私に下すつて、まだ書物かきものがあるからといつて急に私にあちらへ行けとおつしやましたから
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
これは父上様のよくおつしやる、気まぐれではないやうに思はれます。云々
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「うゝん、さうぢやない。父さまはぢきかへるとおつしやつた。」
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
『いつかおつしやつた様に雑誌を満百号限りおし遊せな。それは貴方あなたに取つても私に取つても残念ですけれど。』
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
『母さまはキイキを癒しに被入いらつしやるんですよ。』と私が申上げましたら、『知つてるよ』なんて左様さうおつしやいまして……あれを思ふと御可哀さうで御座います。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
とうさまが私のことを棒ふらの様だなんておつしやるんですもの。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
伯母さんは階下したで一服やつて、およめさんの心得に成るやうなことをお節に言つて聞かせる、それから女持の煙草入を手にしながらお父さん達のおつしやる方へ行つた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
病院の規則としては御断りするんだけれど、まあほかの方でないからツて、院長さんも左様さうおつしやるんですよ。
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『では、是非御目に懸りたいことが有まして、斯ういふものが伺ひましたと、何卒どうか左様さうおつしやつて下さい。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
左様さうおつしやる方も御座います。ナニ、被入いらしつて、慣れて御了ひなされば、何でもありません。黴菌ばいきんが病院中飛んでゞも居るやうに、慣れない方は思召おぼしめすでせうが、そんな訳のものでは御座いませんサ。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)