仕向しむ)” の例文
へだては次第しだいかさなるばかり、雲霧くもきりがだんだんとふかくなつて、おたがひのこゝろわからないものにりました、いまおもへばそれはわたしから仕向しむけたので
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
マーキュ さゝ、足下おぬしはイタリーでれにもひけらぬ易怒男おこりむしぢゃ、ぢきおこるやうに仕向しむけられる、仕向しむけらるればすぐおこる。
しかしこの間において不思議な事は、私が予期しなかった謀事はかりごとがずんずんその場合に臨んでほどこされるように、向うから仕向しむけてくれた一事である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
はたの人の仕向しむけ、それに私たちの幼児おさなごが、どんなに同化されやすいものであるか——それゆえにまた私たちは知らずしらず自分の子供をかばいたさに
おさなご (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
それでもをつとおとうとだとおもふので、るべくはそりあはせて、すこしでもちかづけるやうに/\と、今日迄こんにちまで仕向しむけてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れから亜米利加アメリカに行き、その次には欧羅巴ヨーロッパに行き、又亜米利加に行て、ただ学問ばかりでなく実地を見聞けんもんして見れば、如何どうしても対外国是こくぜうように仕向しむけなければならぬと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
生者と死者とでは、これに対する血縁の人々の仕向しむけが、正反対に異ならねばならなかったからである。生きている者の救済も必要ではあるがこれはおもむろに時節を待っていることもできる。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのやうなつまらぬかんがへをつて、つまらぬ仕向しむけをいたしまするつまへ、のやうな結構けつこうひとなればとて親切しんせつむかはれましやうか、お役所やくしよから退けておかへあそばすに
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
実に馬鹿気ばかげたことで、政府は明治二十三年、国会開設と国民に約束して、十年後には饗応するといって案内状を出したようなものだ、所がその十年の間に客人の気に入らぬ事ばかり仕向しむけて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
むかしやうくわつげきして、すぐ叔母をばところ談判だんぱんける氣色けしきもなければ、今迄いままで自分じぶんたいして、世話せわにならないでもひとやうに、餘所よそ々々/\しく仕向しむけておとうと態度たいどきふ方向はうかうてんじたのを
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私はその人達より一方ひとかたならぬ深い恩を受け、私がここまで出て来る事の出来ないのを出て来られるようにほとんど仕向しむけてくれたといってもよい恩人が今日わざわいにかかって居るのを知りながら
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
はたの仕向しむけでどうにでもなりやすい幼児おさなごのことだからと、世俗にもいう親の欲目のために、いちいちそれを他人ひとの仕向け方のせいにしようとしたりすることが、じつによくあることですけれど
おさなご (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)