三年みとせ)” の例文
これを見た山男は、小鳥さへかくは雄々しいに、おのれは人間と生まれながら、なじかは三年みとせ勤行ごんぎやうを一夜に捨つべいと思ひつらう。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かつて大槻内蔵之助おおつきくらのすけ演劇しばいありし時、かれ浅尾を勤めつ。三年みとせあまりさきなりけむ、その頃母上居たまいたれば、われ伴われて見にきぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくてまた三年みとせ過ぎぬ。幸助十二歳の時、子供らと海に遊び、誤りておぼれしを、見てありし子供ら、おそれ逃げてこの事を人に告げざりき。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
○さて太宰府に謫居てききよし給ふ事三年みとせにして延喜三年正月の頃より 御心れいならず、二月廿五日太宰府にこうじ玉へり、御年五十九。
その子のせし後、彼は再び唯継の子をば生まじ、と固く心に誓ひしなり。二年ふたとせのち三年みとせの後、四年よとせの後まであやしくも宮はこの誓を全うせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
盗んだ金やった金じゃない、三年みとせ越し身を削る思いで溜めた三百両を、一人占めにされちゃかなわない。
自然の移り変りを数えて三年みとせの月日を数えてきたが、今年六歳になったと思っていた幼いせがれが、わしが家を出る時、「いっしょに行く」といってきかないのを
……三年みとせの間の夫婦仲、人がうらやみ笑うほどに、……笑われますのも至極のほどに……そうありましたはいつわりか! ……それならいっそ! ……いっそ妾を!
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女教師は四十余の処女しょじょなりしが、家の娘のたかぶりたるよりは、我を愛すること深く、三年みとせがほどに多くもあらぬ教師の蔵書、ことごとく読みき。ひがよみはさこそ多かりけめ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かくて三年みとせの間にこれらは倒れ、他はいま操縱あやなすものゝ力によりて立ち 六七—六九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
世移り人失ひとうせぬれば、都は今は故郷ふるさとならず、滿目奮山川、ながむる我も元の身なれども、變り果てし盛衰に、憂き事のみぞ多かる世は、嵯峨の里も樂しからず、高野山に上りて早や三年みとせ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
何よりもおぼつかなきは御所勞ごしよらうなり。かまへて、さもと、三年みとせのはじめのごとくに、きうぢ(灸治きうぢ)させたまへ。やまひなき人も無常むじやうまぬかれがたし。たゞし、としのはてにあらず法華經ほけきやう行者ぎやうじやなり。
かくて三年みとせばかり浮世を驀直まっすぐに渡りゆかれければ、勤むるに追付く悪魔は無き道理、殊さら幼少よりそなわっての稟賦うまれつき、雪をまろめて達摩だるまつくり大根をりてうそどりの形を写しゝにさえ、しばしば人を驚かせしに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たわやめの色に溺れてこの三年みとせおぞや大事を我が忘れたり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「その覚一は、三年みとせほど前から、都へ行っておりまする」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長崎に来りて既にまる三年みとせ友のいくたり忘れがたかり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
されど、そは、三年みとせも前の記憶なり。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
涼しさや三年みとせ来ざりし山の荘
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
三年みとせぶり恋人ひぬ
人妻 (新字旧仮名) / 渡久山水鳴(著)
妻たる三年みとせ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
二年ふたとせ三年みとせ
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
○さて太宰府に謫居てききよし給ふ事三年みとせにして延喜三年正月の頃より 御心れいならず、二月廿五日太宰府にこうじ玉へり、御年五十九。
その行ないにおいてはなおかつ滝の白糸たる活気をばたもちつつ、その精神は全く村越友として経営苦労しつ。その間は実に三年みとせの長きにわたれり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼方あなたも在るにあられぬ三年みとせの月日を、きは死ななんと味気あぢきなく過せしに、一昨年をととしの秋物思ふ積りやありけん、心自から弱りて、ながらへかねし身の苦悩くるしみを、御神みかみめぐみに助けられて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かくて三年みとせばかりは夢の如くにたちしが、時来れば包みても包みがたきは人の好尚なるらむ、余は父の遺言を守り、母の教に従ひ、人の神童なりなどむるが嬉しさに怠らず学びし時より
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
風花に山家住居やまがずまいもはや三年みとせ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
三年みとせのうちに三度みたび
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
三年みとせ十年ととせ……」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母上みまかりたまいてよりこのかた三年みとせを経つ。の味は忘れざりしかど、いまふくめられたるはそれには似ざりき。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくて三年みとせばかりは夢のごとくにたちしが、時きたれば包みても包みがたきは人の好尚こうしょうなるらん、余は父の遺言を守り、母の教えに従い、人の神童なりなどむるがうれしさに怠らず学びし時より
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
三年みとせこのかた
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
欣弥のまなこひそかに始終恩人の姿に注げり。渠ははたして三年みとせの昔天神橋上月明げつめいのもとに、ひじりて壮語し、気を吐くことにじのごとくなりし女丈夫なるか。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三年みとせばかりは
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ふところをかいさぐれば常にしかりたまふなり。母上みまかりたまひてよりこのかた三年みとせつ。の味は忘れざりしかど、いまふくめられたるはそれには似ざりき。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三年みとせの間朝夕室をおなじゅうした自分の口からも、かほどまでに情のこもった、しかも無邪気な、罪のないことをいい得なかったことを思って、ひしと胸を打たるるがごとくに感じたのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この俊爽なる法官は実に渠が三年みとせの間夢寐むびも忘れざりし欣さんならずや。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)