黒闇々こくあんあん)” の例文
この谷間の、この部分だけは白昼のように明るいけれども、周囲は黒闇々こくあんあんに近い山々。僅かに二日の月が都留つるの山のに姿を見せているばかりです。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
旋風せんぷうにあおられたたこは、つりかごを前後左右にかたむけゆりあげて、黒闇々こくあんあんのなかを飛んでゆく。はげしい動揺どうようのために富士男は眼のくらむのをおぼえた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
穴のごとく、その底よりは風の吹き出づると思う黒闇々こくあんあんたる坂下より、ものののぼるようなれば、ここにあらば捕えられむと恐しく、とこうの思慮もなさで社の裏の狭きなかににげ入りつ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
森をぬけると視野しやはかつぜんと開けて、砂浜の先に、たけりくるった黒い海が、白いきばをむきたてて、なぎさをかんでいる。黒闇々こくあんあんのなかに白く光る波がものすごい。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)