麻睡薬ますいやく)” の例文
襖の蔭から飛出した白いものは、云うまでもなく麻睡薬ますいやくをしませた布で、そこにもう一人の悪党がひそんでいて、彼の不意をうった訳だ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
酒には、麻睡薬ますいやくぜてあったらしい。三名とも、蒟蒻こんにゃくのように正体なく、よだれを垂らして伸びてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兇行前きょうこうぜん、同室に熟睡中の同僚を麻睡薬ますいやくがせてよく睡らせてしまい、兇行後には自分もみずからこの薬の力を借りて熟睡に陥り巧みにみんなの眼をごまかしていたものである。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ピストルで身動きも出来ぬ明智の鼻の先へ、パッと飛びついて来た白いもの、いつの間に用意したのか、麻睡薬ますいやくをしみ込ませたハンカチだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)