鯨幕くぢらまく)” の例文
鯨幕くぢらまくの後ろから棺へ脇差を突つ込んだ利三郎が、どうして壇の前に居て善八を介抱したのでせう」
サツと一陣の晝の風が吹くと、棺の後ろの鯨幕くぢらまくが動いて、何やら不吉なうめき聲——。
「氏神の玉垣を寄附する時も、親柱五本に菊屋傳右衞門の名をきざませ、檀那寺だんなでら鯨幕くぢらまくにも自分の名が入つて居るし、時の鐘の月掛けも、四文で濟むところを、十二文と出すんださうで」
棺の中でうめき聲がして、敷いた白い布がサツと赤くなつて、皆んなそれに氣を取られて居る時、そつと鯨幕くぢらまくすそを潜つて出るのは、手品によくあるだが、うまい事を考へたものさ。