魔魅あやかし)” の例文
中の声と一緒に戸がいて、さッと明りが流れて来た。途端に、のしお頭巾の女の魔魅あやかし、すばやく姿を消している。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新九郎は魔魅あやかしの声でも聞くように、宙に眼を吊らしてしまった。いかにもそれはお延が言う通りな虚無僧の尺八、縷々るるとしてむせぶような哀音が、彼方あなたの闇に迷っている。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜気ひんやりとしてきたこく過ぎ、更け沈んだ離室はなれの灯は、丁字ちょうじに仄暗く、ばさと散ったの翼から、粉々と白いものが新九郎の顔に降った——と、魔魅あやかしのすり抜けてくるよりも密やかに、橋廊下を
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)