風師山かざしやま)” の例文
「いや、風師山かざしやまへ登れば船島の磯の松すら見える。しかとは分らいでも、その日のお船手の固めや、豊前、長門の両岸の、物々しい有様を見るだけでも」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風師山かざしやまのいただきを、強い風のわたっているのが、海鳴りのように聞える。二百十日が近づいた、その前ぶれかも知れない。遠くで、風の合間を縫って、汽笛が鳴る。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
門司もじせきの町屋、風師山かざしやまの山のしわも、明らかに望まれた。そこら辺りに群れのぼって、見えぬものを見ようとしている群衆が、ありのかたまりのように黒く見える。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それよりは風師山かざしやまへ登って、眼の下に大観すれば、かえって往時を想像するにはいいかもしれませんよ。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)