顰面しかめつら)” の例文
「ありゃあ、二葉の里で、毎日二つずつ大きな饅頭まんじゅうを食べてんだそうな」……夕刻、事務室のラジオは京浜地区にB29五百機来襲を報じていた。顰面しかめつらしていていた三津井老人は
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
しよつちう顰面しかめつらを向け合はしてゐるなんて、気の利かない話ぢやありませんかね。汚い冗談をずけ/\言ふ奴ほど腹は綺麗かも知れませんね。ほんとですよ。それとも、綺麗ごとがお好きですか
(新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
やがて伊豆が漸くに立ち上る気配を察しると、なほ振向いて確かめやうともせずに長足を延して悠然と歩きだしたが、青ざめきつた顰面しかめつらで伊豆がやうやう追ひつくと、急にぽつんとこぼすやうな冷淡さで
小さな部屋 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)