雨露次うろじ)” の例文
「わかりました。では、そこにおいでのお方は、むかし雨露次うろじと隠れ名していた服部治郎左衛門どのと、卯木さまでございましょうがな」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俊基主従を途中まで送って、人目にふれぬ暗いうちにと、河内野を駈けるように、もとのわが家の苫舟へ帰ってゆく申楽師さるがくし雨露次うろじであった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、ちげえねえ。おまえさんは、古市にいた舟芸人の雨露次うろじの女房、たしか卯木さんと仰っしゃいましたね」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちまたでは名を雨露次うろじとかえ、卯木もその遊芸人の妻だった。だが、浮草のような生活たつきの中にも、夫婦ふたりだけの生きがいを、また愉しみを、見つけかけていたのではなかったか。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
解くがよい。そして元の武門の外の芸能者、雨露次うろじに返ることをわしからすすめる。……卯木にも異存はないはず。夫婦ふたりして、よう行くすえを話しおうて、これからの世を歩むがいい
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「オ、それも申さいでおりましたか。……イヤどうも失礼をいたしました。てまえは、申楽師さるがくしと申しましても、しがない大道芸人にひとしい、すぎもと雨露次うろじと申すものでございます」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)