阿婆擦あばず)” の例文
「頭領のこがれている阿婆擦あばずれだ、とっ捉まえて連れて行き、うんとこさ褒美にあずかろうぜ!」……で妾を取り巻いたものさ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
幾らお紋が阿婆擦あばずれでも、好きでこんな事をするものかね、みんな正さんと楽しくやって行きたいためじゃないか。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「え、——あんな女はありゃしません。下品で、阿婆擦あばずれで、派手好きで、おしゃべりで、食いしん坊で——」
「え、——あんな女はありやしません。下品で、阿婆擦あばずれで、派手好きで、おしやべりで、食ひ辛坊で——」
拙者、先ほど、阿婆擦あばずれた女などが、そなたの恋人へ附きまとうやもしれずと申しましたな。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
脂ぎった妖艶なお楽と、鉄火で阿婆擦あばずれで男のように啖呵たんかを切るお町と、出戻りとはいっても、美しくて賢いお品の間に挟まって、一と晩さいなまれたのです。
「こう云っているうちにも、阿婆擦あばずれた女などが、そなたの恋人——いずれ、しおらしい、初心の栞殿の恋人ゆえ、同じ初心のしおらしい殿ごでござろうが、その殿ごへ、まとい付いて……」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ところで、兼松ほど夢中になった人間でも、お小夜のような阿婆擦あばずれ女の命と、自分の命と取り換えちゃかなわないとおもったんだろう。仏敵は亡ぼしたいが、自分が縛られたくない。
阿婆擦あばずれ女であろうとも……」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)