防空頭巾ぼうくうずきん)” の例文
その夜、広島上空を横切る編隊爆音はつぎつぎに市民の耳を脅かしていたが、清二も防空頭巾ぼうくうずきんに眼ばかり光らせながら、森製作所へやって来た。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
防空頭巾ぼうくうずきんにモンペをつけ、一合の米の袋に一切れの牛肉、一個のリンゴの土産をもったいぶって差出せたような辛い時代、はげしさをうちに沈めているような千恵子は
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
正三はかに胸をかれ、えりを正さねばならぬ気持がするのであった。それから彼が事務室のやみを手探りながら、ラジオに灯りを入れた頃、厚い防空頭巾ぼうくうずきんかぶった清二がそわそわやって来る。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)