長汀ちょうてい)” の例文
潮のけぶる長汀ちょうていに、まだ明るい残照の陽かげが、ところどころ、夕霞を破ってはおりますが、次郎の視線のとどくかぎり、月江様らしい人影は見当りません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわゆる長汀ちょうてい曲浦きょくほの風光のごときも、おいおいに改まらざるをえなかったのである。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
細雨にけむ長汀ちょうていや、模糊もことして隠見するみどりの山々などは、確かに東洋の絵だ。
駆けるほどに、呼ばわるほどに、暮れかけている横磯の長汀ちょうていは、またたくうちに、次郎の飛ぶ足のうしろとなって流れ去りましたが、かくてもまだ、その人に似た姿は先に見えません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひろい六甲の山野から打出ヶ浜の長汀ちょうていへかけて急なうごきがみえだしていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)