くわん)” の例文
「親分、金藏の窓のたこを取つて來ましたよ。くわんに絲を通してあつたんで、飛んだ大骨折さ。凧は滅茶々々にこはれて居るが、うなりは立派だ」
わたくし自身は、前柱の帆を解き放すと一しよに、ぴつたり腹這つて、足を舳の狭い走板はしりいたにしつかりふんばつて、手では前柱の根に打つてあるくわんを一しよう懸命に握つてゐました。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
洗吉さんはいつも寝がけには、その間がもぢ/\されるやうに仰りながら長火鉢の抽斗のくわんいぢつたりなさつて、おくみが縫物の針を送り/\する前に坐つてお出でになつたりした。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
「金魚の尾鰭に、すゞくわん。走れよ、走れと申されし」(類諺集)
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
そのくさりのくわんは しづかにけむる如く
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
凧は金藏の二階の窓のくわんに掛つてゐた。——引つかけて置いたと言つた方が宜いだらう。絲は鐶を通してあつたさうだから。
金藏の嚴重に閉つた二階窓の扉のくわんに引つ掛つてバタバタして居るではありませんか。
母家との間がたつた三尺、開けたところで、土藏へはろくな光線も入りませんが、火事に備へるために、漆喰扉の厚さは充分で、扉の中ほどには、鐵で拵へた引手の大きいくわんが附いて居ります。
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)