鎮台ちんだい)” の例文
旧字:鎭臺
街は青州せいしゅう清風寨せいふうさいの要害の地にあるので、かなりな繁華を呈し、各州へ通じる三街道の起点をなし、人家四、五千、小高いところに鎮台ちんだいがある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうやって三日か五日いつか声も立てずに閉じこもって、また長靴を光らしてこの別荘から出て行くと、忘れたころにぽつりぽつりと、どこかの鎮台ちんだいの将校の首が飛んで
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
自分の五歳の頃から五年ほどの間熊本鎮台ちんだいに赴任したきり一度も帰らなかった父の留守の淋しさ、おそらくその当時は自覚しなかった淋しさが、不思議にもこの燈下の寒竹の記憶と共に
郷土的味覚 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「やい花栄かえい。なんじの家は代々朝廷の一武官たる上、身は鎮台ちんだいの将として地方へ赴任していながら、山賊の仲間に落ち入ったとは何事だ。恥を知れ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「女子と小人。珍らしくもありませんよ。恨みは解くべし、結ぶべからず。いつか鎮台ちんだいでお会いになったら、それとなく劉高りゅうこうへはなしておやりなさい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわば筑紫つくし九ヵ国の鎮台ちんだいだ。少弐、大友、島津をはじめ鎮西の諸豪はみなもう駒をつないでいる風だった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)