鋼鉄色はがねいろ)” の例文
秋もう末——十月下旬の短い日が、何時しかトツプリと暮れて了つて、霜も降るべく鋼鉄色はがねいろに冴えた空には白々と天の河がよこたはつた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
雲一つない鋼鉄色はがねいろの空には、鎗の穂よりも鋭い星が無数にきらめいて、降つて来る光が、氷り果てた雪路の処々を、鏡の欠片かけらを散らかした様に照して居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
坂の上に鋼鉄色はがねいろの空をかぎつた教会の屋根から、今しも登りかけた許りの二十日許りの月が、帽子も冠らぬ渠の頭を斜めに掠めて、後に長い長い影を曳いた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)