金銭おかね)” の例文
旧字:金錢
『あ、ちよと、気の毒だがねえ、もう一度役場へ行つて催促して来て呉れないか。金銭おかねを受取つたら直に持つて来て呉れ——皆さんも御待兼だ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
子供は率直だ、あたしの家ではあまり金銭おかねの顔を見せない、あたしに金銭の貴さを知らせるには無理だった。
その日は御祝の印といって、旦那様の御思召おぼしめしから、門に立つものには白米と金銭おかねを施しました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
金銭おかねで頂いたら、た父親に呑まれはすまいか、という心配が母親の腹にありましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
奥様は泣はらした御顔を御出しなすって、きょうの御祝の御余おあまりの白米や金銭おかねをこの女に施しておやりなさるところでした。奥様が巡礼を御覧なさる目付には言うに言われぬうれいが籠っておりましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)