あわ)” の例文
「うん。一しょに往くよ。」坊ちゃんはあわてて格子戸から降りて、下駄を穿いて、よしやのあとを追うようにして、走って出掛ける。
おや落したかとすこしあわてて見直したらね、小さく畳んだ十円が入っているの。いつの間の仕業でしょう。なかなかいいおかみさんではありませんか。
咲がどうしてあんなにあわててけとばすように、今この勢という風に行ってしまったかが忽然として会得されました。
折から白い花を咲かせているどくだみは、その根を引き抜くとき、麝香じゃこうのような、執念ぶかい烈しいかおりみなぎらす。嗅神経がこれを迎えて、あわてていよいよ緊張する。
あわてて駈け出したり、何かにひっかかったりしながらだけれども、自分でこぼす涙を手の甲でふりとばしたり、笑ったりしつつ、自分の劣っている面への意識にこびりつかず
静寂な「無」にはぐくまれるあわただしい幻想でなくて何であろう。
少しあわてた桃子は丁寧に女学生っぽいお辞儀をかえした。
夜の若葉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)