遍照へんしょう)” の例文
いや、むしろ可愛い中にも智慧ちえの光りの遍照へんしょうした、幼いマリアにも劣らぬ顔である。保吉はいつか彼自身の微笑しているのを発見した。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
... この豊御酒とよみきは」というのであり、「平らけく吾は遊ばむ、手抱きて我はいまさむ」とは、慈愛遍照へんしょうする現神あきつかみのみ声である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いや、伝説によれば、愚物の吉助の顔が、その時はまるで天上の光に遍照へんしょうされたかと思うほど、不思議な威厳に満ちていたと云う事であった。
じゅりあの・吉助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
俊助にはこの絢爛けんらんたる文句の中に、現在の野村の心もちが髣髴出来るように感ぜられた。それは初子はつこに対する純粋な愛が遍照へんしょうしている心もちだった。そこには優しい喜びがあった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)