遊離ゆうり)” の例文
一家中という大勢から遊離ゆうりして、一藩の主脳でも一列の主体者でもない、みなしごのごとき一箇の人間として挙止きょしするような姿がまま見られた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するやいなやうれしくなる。涙を十七字にまとめた時には、苦しみの涙は自分から遊離ゆうりして、おれは泣く事の出来る男だと云ううれしさだけの自分になる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
遊離ゆうり窒素をも利用することが出来るようにこしらえて置いて下さったのであるけれども、人間はただそれに気がつかぬだけだ、と私は解釈するに至ったのです。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ここの御用部屋には、馬廻り役とお使番とが雑居していて、相当用事も多いのだが、数右衛門だけは、いつも事務から遊離ゆうりして、まごついているふうであった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)