進入はい)” の例文
それはいよいよ本題に進入はいるに当って、まず作中の主人公となすべき婦人の性格を描写しようとして、わたしはにわかにわが観察のなお熟していなかった事を知ったからである。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
コールタを流したような真黒な溝の水に沿い、外囲いの間の小径に進入はいると、さすがに若葉の下陰青々として苔の色も鮮かに、漂いくる野薔薇の花の香に虻のむらがり鳴く声が耳立って聞える。
百花園 (新字新仮名) / 永井荷風(著)