迂余曲折うよきょくせつ)” の例文
小川は、欝蒼たる青葉に眼界を区切られ、迂余曲折うよきょくせつして園の中心へと流れて行く。悪魔の船頭は、ほとんど竿に力を加えずして、舟は流れのままに、静かに進む。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうしてその人間は、迂余曲折うよきょくせつをきわめたしちめんどうな辞句の間に、やはり人間らしく苦しんだりもがいたりしていた。だから樗牛は、うそつきだったわけでもなんでもない。
樗牛の事 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
けれども、そこで降りてみて、いいようだったら、そこで一泊して、それから多少、迂余曲折うよきょくせつして、上諏訪のあの宿へ行こう、という、きざな、あさはかな気取りである。含羞がんしゅうでもあった。
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ことにただいま牧君の紹介で漱石君の演説は迂余曲折うよきょくせつの妙があるとか何とかいう広告めいた賛辞をちょうだいした後に出て同君の吹聴通ふいちょうどおりをやろうとするとあたかも迂余曲折の妙を極めるための芸当を
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの大鉄傘の中を、或は昇り、或は下り、迂余曲折うよきょくせつする迷路、ある箇所は、八幡の藪不知みたいな、真暗な木立になって、鏡仕掛けで隠顕する、幽霊まで拵えてある。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)