赤鏽あかさび)” の例文
小みちは要冬青かなめもちの生け垣や赤鏽あかさびのふいた鉄柵てつさくの中に大小の墓を並べていた。が、いくら先へ行っても、先生のお墓は見当らなかった。
年末の一日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
赤鏽あかさびの浮いた水には妙に無気味な感覚があって、どこかの草むらから錦の色をした蛇でも這出はいだしそうな気がした。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
井戸——といっても味噌樽みそだるを埋めたのに赤鏽あかさびの浮いた上層水うわみずが四分目ほど溜ってる——の所でアネチョコといい慣わされた舶来の雑草の根に出来るいもを洗っていると
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
観覧車も今はげきとして鉄骨のペンキも剥げて赤鏽あかさびが吹き、土台のたたきは破れこぼちてコンクリートの砂利がみ出している。殺風景と云うよりはただ何となくそぞろに荒れ果てた景色である。
障子の落書 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)