赤酒せきしゅ)” の例文
昔金に飽かして手に入れた、わらだけの粉を和蘭オランダ渡りの赤酒せきしゅに入れて、皆んなに一杯ずつ呑ませ、あらん限りの馬鹿な顔をさせてみるつもりだったのです
ばあやが間近く顔を寄せながら言った。そして、その右手をわなわなと顫わしながら、赤酒せきしゅらしい赤紫色の液体をなおも紀久子の口に勧めようとしていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
枕もとには白衣の看護婦が氷に和せし赤酒せきしゅを時々筆に含まして浪子のくちびる湿うるおしつ。こなたには今一人の看護婦とともに、目くぼみ頬落ちたる幾がうつむきて足をさすりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
赤酒せきしゅを与えると、間もなく意識を恢復しましたが、額に手を触れて見ると火のようにほてりましたから、検温器をあてて見ると、驚くではありませんか、四十一度五分の高熱です。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「この中には、和蘭オランダ渡りの赤酒せきしゅがある。ほんの少しばかりだが、その味の良さというものは、本当にこれこそ天の美禄というものだろう。ほんの一杯ずつだが、皆んなにわけて進ぜたい。さア、年頭としがしらの七平から」