豊醇ほうじゅん)” の例文
一たび徂徠の古文辞を唱えてよりここに始めてその形式と体例とを完成し、その感情と思想とを豊醇ほうじゅんならしむる事を得るに至った。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
要するに、小六の殺伐さつばつなる刃物は、お延をつないでいる強い鎖であり、お延のもつ豊醇ほうじゅんな年増美は、男をとろかす毒液であった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善鸞 (杯を手に持ちて)このなみなみとあふれるように盛りあがった黄金色こがねいろの液体の豊醇ほうじゅんなことはどうだろう。歓楽の精をとかして流したようだ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この曲に示したカサドの演奏は、カサルスの平明豊醇ほうじゅんさともまた違ったものである。カサドの特色なる甘美な柔軟さは充分あるが、その上、情熱と燃焼と、力のみなぎりが、かなりよく表現されている。