請地うけじ)” の例文
早急の場合仮に越して来た請地うけじでは店も張れず、どこか商いの利くところに一軒、権利を買わせるのにも相当の金が必要だった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その父武次郎は、代々請地うけじに住んでいて、上野輪王寺宮に仕えていた寺侍であったが、維新後は隠居をし、長男虎間太郎こまたろうを当時江戸派の彫金師として羽ぶりのよかった尾崎一美かずよしに入門せしめた。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
貸提灯かしぢょうちんを提げて雪駄穿きで、チャラリ/\と又兵衛橋またべえばしを渡って押上橋おしあげばしの処へ来ると、入樋いりひの処へ一杯水が這入って居ります。向うの所は請地うけじ田甫たんぼでチラリ/\と農家の燈火あかりが見えます、真の闇夜やみ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ああ、今は請地うけじへ越したよ。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
少しは頭脳あたまがはっきりし、悲しみもれて行ったが、請地うけじではもう早起きの父が起きている時分だなぞと考えてみたりした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
向島の請地うけじにまだ壁も乾かない新建ちの棟割むねわりを見つけて契約し、その日のうちに荷造りをしてトラックで運び出してしまい、千葉を引き払った銀子たちがそこへ落ち着いたのは
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)