誠意まこと)” の例文
幾多の人の親切も誠意まことも、年老いた父母の涙をも、唯々自らの個性を葬る圧迫とのみ思いました。
職業の苦痛 (新字新仮名) / 若杉鳥子(著)
戀に人目をしのぶとは表面、やみ夜もある物を千里のかち跣足はだし誠意まことは其時こそ見ゆれ、此家こゝよりは遠からぬ染井の別墅に月の幾日を暮すとは、新聞をまたでも知るべき事なり
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
誠意まことは愚に似しものなりけり、其夜ふけたる燈火のかげにお蘭樣を驚かして、涙にぬれし眼のうち唯事ならず、疊に兩手をきつと畏まりし直次の躰、これは何事とおらん樣心もとながりて
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)