西蕃せいばん)” の例文
保儀使ほぎしといえば軍人でも佐官に過ぎない。のみならずこの宣賛せんさんは、西蕃せいばんとの混血児あいのこである。ヒゲは赤く、ちぢれ毛で、鍋底なべぞこのような顔にまた念入りにも雄大なる獅子ッ鼻ときている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西蕃せいばんの守りに任じ、天子に朝拝する折もめったになく、国舅とも稀にしかお目にかかれんで、押してご面会をねがったわけだが——こう打見るところ、さしてご病中のようにも見られぬ。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また青眼虎は、西蕃せいばん流の撃剣の師だというならなおもって頼もしい。聞けば……沂水きすい県の沂嶺きれいで、黒旋風こくせんぷう李逵りき)のために、四匹の虎が殺された代りに、ここへ二匹の虎がふえたわけだな
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬騰ばとうは、彼の真意を聞き、また帝の密詔を拝するに及んで、男泣きに慟哭どうこくした。彼は、遠い境外の西蕃せいばんからも、西涼の猛将軍と恐れられていたが、涙もろく、そして義胆ぎたんてつのごとき武人だった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)