蠱惑力こわくりょく)” の例文
それらは実に鮮やかに、また鋭くきざみ出されているのであるが、しかしその美しさは、天平の観音のいずれにも見られないような一種隠微いんび蠱惑力こわくりょくを印象するのである。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
全盛期を過ぎた伎芸ぎげいの女にのみ見られるような、いたましく廃頽はいたいした、腐菌ふきん燐光りんこうを思わせる凄惨せいさん蠱惑力こわくりょくをわずかな力として葉子はどこまでも倉地をとりこにしようとあせりにあせった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)