藍甕あいがめ)” の例文
藍甕あいがめをぶちまけたような大川の水が、とろっと淀んで、羽毛はねのような微風と、櫓音と、人を呼ぶ声とが、川面を刷いていた。
しかしこの型染かたぞめの他に、糊引のりびきといって、布の上にじかに糊を絞り出しながら絵を描き、それを藍甕あいがめけ、これに色を差してゆく方法があります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あかるい月は日の出前に落ちて、寝静まった街の上に藍甕あいがめのような空が残った。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
陰気な顔をして一日じゅう藍甕あいがめのまわりでうろうろしている。
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
じっさい、人に旅を思わせる好天気がつづいて、江戸の空は、藍甕あいがめの底をのぞくように深いのだ。朝早く、金剛寺の森にうぐいすが鳴く。夜も昼も、草木の呼吸する音が聞こえるような気がした。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)