藍玉屋あいだまや)” の例文
さればこそ、三輪の里には業風が吹きそめて、藍玉屋あいだまやの金蔵はそれがために生命いのちをかけた。そこまでは、この一座の誰でもが知らない。
もとはやはり姻戚の阿波の藍玉屋あいだまや生鼠壁なまこかべの隣に越太夫という義太夫の師匠が何時も氣輕な肩肌ぬぎの婆さんと差向ひで、大きな大きな提燈を張り代へながら、極彩色で牡丹に唐獅子や
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
藍玉屋あいだまやの息子で金蔵という不良少年は、締りのない口元から、惜しいものだね——と、ね——に余音よいんを持たせて、女の入って行ったあとを飽かずに見ていたが
泥まみれになって自分の家の井戸側へせつけたのは、かの藍玉屋あいだまやの金蔵で、ハッハッと息をつきながら
その時に現われた狂人の面影おもかげは、大和の国の三輪の藍玉屋あいだまやせがれの金蔵というもののそれにそっくりです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お豊は驚いて涙をかくすと、藍玉屋あいだまやの金蔵が、いつ隠れていたか杉の蔭からそこへ出ています。
ずっと前に、はじめて三輪の藍玉屋あいだまやの不良息子の金蔵に鉄砲を教えた惣太そうたでありました。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「憎みます、一人残らず憎みます、まして、あの藍玉屋あいだまやの金蔵という奴、室町屋という温泉宿を開いておりましたあいつを最も憎んでやりたい、あいつが、お豊をいいように致しました」