“菟原(うばら)” の例文
右馬(うま)の頭(かみ)の菟原(うばら)ノ薄男(すすきお)はとある町うらの人の住まない廃家の、はや虫のすだいている冷たい竈(かまど)のうしろに屈(こご)まって、匿(かく)れて坐っていた。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
生絹はまだ明るい夕あかりのなかに紛(まご)う方もない、菟原(うばら)ノ薄男(すすきお)を見たのであった。頬は窪(くぼ)み眼はおとろえ、これが薄男の右馬(うま)の頭(かみ)とはどう考えても信じられぬほどであった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
今は菟原(うばら)ノ薄男(すすきお)とまで下賤(げせん)な人のように世間で呼ばれるようになった右馬(うま)の頭(かみ)とても、そういう生絹のあどけなくも鋭いのぞみを見るともう生絹を京にやるよりほかに愛しようとてもなかった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)