菊花石あばた)” の例文
武州榛沢はんざわ村から出てきたばかりで、まだどこか泥くさい田舎いなか出の様子が抜けきれていない。うす菊花石あばたがあって、背の低い方だった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親方の米櫃こめびつからだとみえる。——左次郎はそんなことを考えながら、銅鑼という通称をとった彼の菊花石あばたを眺めていた。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊花石あばたくずれの鬼みたいな顔である。花夜叉という芸名は、それを愛嬌に売り物としている所から来たものだろう。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と言って、銅鑼屋の亀さんはさも得意気に、顔の菊花石あばたが一粒一粒笑うようにニヤニヤとした。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊花石あばたの顔を少しけわしくして、電光いなびかりのように、しきりと右の眼をしかめている様子。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白っぽいうす菊花石あばたが、ひと粒ひと粒笑っていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)