茫乎ぼう)” の例文
そして、蹴上けあげの辺りに、茫乎ぼうとしてたたずんでいる間に、京の町々の屋根、加茂の水は、霧の底からっすらとけかけて来た。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、又何となくふしぎに目のとどくところに茫乎ぼうとした影が、ちぢまり震えて見えるような気もした。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
それが餘り立込んで來ると、時として少し頭が茫乎ぼうとして來る事がある。『こんな事で逆上せてなるものか!』さう自分で自分を叱つて、私はまた散りさうになる心を爲事に集る。
硝子窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
茫乎ぼうとして、野末の夕霧を見まわした。そして過去と未来をつなぐ一すじの道に、果てなき迷いと嘆息を抱いた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)